同時刻。
鈴理は自宅に大雅を呼んで自分のすべきことの最終段階に入っている真っ最中だった。
そう、大雅の受け持つデータ分析も終わったのである。
後はこのデータを合わせ、第三者に見てもらって親に直談判すればいいだけ。
チェックしてくれるのは竹之内家次女真衣と、この案の発案者二階堂家長男の楓である。
二人とも多忙な時間を割いてこの場に来てくれている。感謝すべきだろう。
「いやぁ、二人が本当にデータ分析をやり遂げちゃうなんて凄いな。さすがは僕の弟に妹」
鈴理の自室で能天気に紅茶を啜っている楓はへらへらっと鈴理達を褒めていた。
あまり良い顔をしないのは大雅である。
「おい兄貴。鈴理を妹にするのはやめろ。俺がマジで結婚したみたいな気分になる」
「立場上はそうでしょう? 僕は昔から鈴理ちゃんを妹のように見ているわけだし。鈴理ちゃんだって僕をお兄ちゃんとして見てくれているだろう?」
「ええ」鈴理は素直に返事して一笑する。
「やめてくれ」ゲンナリする大雅に真衣がクスリと笑い、彼にデータは持ってきたかと尋ねた。
首肯する大雅はUSBメモリにちゃんと入れて持ってきたと返答。
「早いところこの二つを合わせてチェックしてもらおうぜ」
大雅が鈴理に催促してきたため、自分のノートパソコンを起動していた鈴理は小さく頷いた。その面持ちは優れない。
「ん、どうした? 浮かない顔して。やっと分析地獄が終わるんだぜ?」
「いや、それはそうなんだが。ちょっと胸騒ぎがしてな。……先ほどから悪寒に似たものを感じるんだ。気のせいだと良いのだが」
「なんだ。風邪か? 馬鹿も風邪をッ、イッテー! テメェ、脛蹴りやがったな!」
失礼なヤツだと鼻を鳴らす鈴理は、お前に話したのが馬鹿だったと溜息をつき、自分の分のデータを呼び起こす。
ああそうだ。
一応二つのデータを合わせる前の自分のデータをUSBメモリに保存しておこう。
合わせる前のデータも親に見てもらって、より自分の努力を評価してもらいたい。
そう思ってブレザーの右のポケットに手を突っ込む。
USBメモリはブレザーの右ポッケに入れっぱなしなのだ。
「ん?」鈴理は顔を顰めた。手を出して掌を開く。
そこにはUSBメモリが二つ。
どちらもノック式、無地のUSBメモリだ。
「なんだこれ。いつの間にあたしは二つもUSBメモリを所持していたんだ?」
「あ? 鈴理、何してんだよ。早くしろって」
「分かっている。急かすな大雅。ただUSBメモリが二つ入っててな。うむ、どちらがあたしのだ?」



