「事情って…、その、お金の」
「ん? さと子。豊福から聞いたのか? ああ、謝ること無いさ。知ってしまったものは仕方が無いよ。そう、僕達はお金で作られた不純な関係なんだ」
熊手を側の松の木に立てかけると、玲はさと子を手招きして縁側に向かった。
日の当たる縁側は婚約者のお気に入りの場所だ。
尤も彼は夜の縁側を好むようだが。
すとんと腰を下ろす玲とは対照的に、さと子はちょこんと縁側に腰掛ける。
謙虚な態度に目で笑い、「豊福は元々別の女と付き合っていたんだ」それも自分の友人と付き合っていたことを暴露する。
「それって先日会った方ですか?」
さと子が顔を上げて見つめてくる。
アタリだと玲は頷いた。
自分の認めた好敵手と付き合っていたのだと肩を竦め、地面の小石をサンダルの先で小突く。
「竹之内鈴理と言うんだが、彼女は財閥界のかなりの変わり者お嬢様で有名だった。男装する僕と同じくらいに」
攻め女受け男の持論を言い出したのは誰でもない鈴理なんだ。
それはそれは変わっている女性だった。
口を開けばやれ攻める女を目指すだの、受け男は何処だの、奇怪なことばかり言っていた。
そんな彼女にも恋してしまう相手ができた。
察しの通り、それが豊福だ。
彼女が変わり者ゆえ豊福は随分鈴理のアタックから逃げていたと話に聞いているが、とうとう豊福自身も彼女に好意を寄せた。
二人は晴れて両思いになりカレカノとして日々を過ごしていた。
睦まじかったそうだぞ。
うん、嫉妬する。
僕の心情はさておき、彼等の日々はそう長くは続かなかった。
何故だか分かるかい?
鈴理には将来を約束されていた許婚がいたんだ。
許婚もまた僕の友人なんだが、鈴理は彼と結婚する気などさらさらなく、これから先もずっと豊福と共にいるつもりだった。
恋人関係の月日なんて果敢無いものだが、鈴理も豊福も時間の許す限り傍にいようと思っていたんだと思う。
けれど鈴理は許婚と婚約した。親に強いられたんだ。
豊福は身分を弁え、彼女に別れを告げている。僕はそこにつけ込んでアタック中なんだ。
ちなみにこれは金銭問題以前の話だ。
間もなく豊福は家の事情で借金を抱えてしまう。
あいつは元々裕福な家ではなかった。
そこに借金だ。
生活ができない状態まで陥っていた。
そんな時に僕の祖父が彼の家の借金を肩代わりした。
祖父は肩代わりする条件として、彼を御堂家の婿養子になるよう指示した。それが今の現状だ。



