リトライということで鈴理先輩がいる2年F組の教室を覗き込んでみる。
と、頭上が暗くなった。
「お?」間の抜けた声を出す俺に、「よっ」珍しいじゃねえかと男性ボイス。
ぎこちなーく視線を上げれば、あっはー、大雅先輩。
今日も綺麗な顔立ちっすね。
俺みたいな凡人は貴方様の面を見るだけで中指を立てたく、じゃない、平伏したくなるっす。まじっすよ。
仁王立ちしている某俺様は何か用かと笑みを深めてきた。
「ちょ。ちょっと鈴理先輩に御用が」
完全にヘタレモードに入っている俺に対し、
「だったら俺の許可がいる」
あいつは俺の婚約者だから?
意味深な台詞が俺の胸に突き刺さった。
ゲッ、まさか鈴理先輩、大雅先輩に……、あー、この雰囲気は言っちゃったクサイっすね!
「いやだな先輩。許可だなんて。俺と貴方様の仲じゃないっすか」
あははのはで笑う俺に、「不審者がいるらしいんだ」と大雅先輩が鼻を鳴らした。
「最近鈴理の馬鹿を狙う変人がいるらしくてな。そいつが、鈴理にセクハラ染みた口説きをしようとしたらしい」
うぐっ、反論できない。
「へえ初耳っすね」目を泳がせる俺に対し、「だから俺様の許可が要るんだ」よってテメェは許可できんと言い放たれた。
ち、チックショーっす!
俺をセクハラの変人扱いしようって魂胆っすね!
だったら強行突破のみ!
「知らないっす!」
脇をすり抜ける俺に、「あ。テメッ!」ざけんなよ! 大雅先輩が後を追って来る。
これでも肉食獣に鍛え抜かれた俊足だからちょっとやそっとじゃ追いつかれない。
俺は向こうに追いつかれる前に、鈴理先輩の席に足を向けると、席についている彼女の背後に避難。
うぇっと大雅先輩に舌を出した。
「この平凡野郎が」
俺様に向かってなんてイイ度胸だと俺様が青筋を立てる。
「ハナタレ坊ちゃんのくせに生意気っす」
どどーんと言い返せば、「もうキレた!」お前なんざから揚げにして食ってやると大雅先輩。
やれるものならやってみろと挑発した俺は混乱の最中、呆気取られている鈴理先輩のポケットにUSBメモリを入れる。
任務は完了だ。
後は野となれ山となれだ。



