前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「ま、兄貴が頼りないばっかりに…、百合子、俺と兄貴のあらやぁだ妄想を作っちまうんだけどな。いっつも俺が兄貴を食べちゃいます設定でっ、泣けてくる」

「大雅先輩…」

「おっと、こうしちゃいられねぇ。鈴理のところに行かないとっ、これでも許婚だからな。傍にいねぇと…あ、勘違いするなよ。俺とアイツは悪友なんだからな」
 

安心しろの意味を込めてウィンクする美形先輩は鈴理先輩の下に戻って行く。


ぱちぱち。ぱちぱち。

瞬きをして彼の背を見送った俺は、フォークでロース肉を刺して口に運ぶ。
ついでにレタスも刺して口内へ。
そのまま咀嚼咀嚼そしゃく。


嚥下した後、視線を鈴理先輩に向ける。
 

比較的男に多く囲まれている気がしないでもない彼女と、その輪の中を裂くよう肩を並べる大雅先輩。

許婚として、各々財閥の顔として談笑を交わしている。

上辺だけだっていうのは表情で読み取れるけど、それでも、二人が並ぶとやっぱ絵になるよな。


美男美女カップルって単語は彼等のためにあるようなもんだ。


こうして現実と向かい合うと落ち込むなって方がちとばかし無理だ。
俺だって複雑な感情を持った人間、ああいう光景を見ると自分に自信を失くす。

口が裂けてもあの二人には言えないけどさ。


ああくそっ、落ち込むな。折角のご馳走が不味くなる!

 
夕飯を浮かせるために此処にやって来たんだ。今日はとことん食べてやるんだぞ。

んー、そうだな。
肉ばっか食ったから、次は魚…、あ、そこにお寿司がある!

向こうにはケーキの盛り合わせもあるじゃん。


うっし、食って食って食いまくってやるぞ。料理は食べるために出されてるんだ。食べないと勿体無い!
 

妙な自棄を起こした俺は、暫し食事に専念することにした。


んでも思った以上に食べられなかったから一旦休憩。
グラスに入ったジュースを飲み干すと、豪華な会場をこっそり抜け出し、そのフロアのロビーへ。


静まり返っているロビーの一角に備え付けられている長椅子に腰掛け、背面に凭れてふーっと息をついた。