「勝負まであと八日だな」
八日後には君が抱けるのかな、セクハラじみた発言に俺は笑みを深めた。
「先輩はそればっかりっす。もっと他に言うことないんっすか?」
「んーっ、そうは言ってもな。豊福の体が僕を誘ってくる」
まじか。
それって具体的にどんな感じっすか? 参考にしたいっす。
なんたって今日の俺のお誘い、鈴理先輩には酷評されちまったんっすから!
口から出そうになった言葉を嚥下し、彼女の額に手を置く。欠伸を噛み締める彼女はお疲れらしい。
「神城ともう共演したくない」
愚痴を零して瞼を下ろしてしまう。綺麗な瞳が瞼の裏に消えるのは残念に思えた。
「でも演劇は好きなんでしょう? また俺に舞台を見せてくださいよ。本当に素敵でした。貴方の舞台。今度は招待して下さいよ?」
「ああ、今度は必ず招待するさ。豊福も演劇部に入ればいいのに」
「俺のところにも確かに演劇部はありますけど、勉強の時間は割きたくないんっすよ。それに棒読みになってしまいますから」
演技力皆無っす。
大袈裟に顔を顰めるけど相手には伝わっていないだろう。瞼を閉じているのだから。
けれど声音で俺がどういう表情をしているのか、分かっているに違いない。
軽く笑声を零していた。
そんな彼女がちょっと可愛くて、俺は目を細める。
「先輩って将来は子供、二人欲しいんでしたっけ?」
「ん? ああ、男の子と女の子が欲しいんだ。
あのジジイは息子がどうたらこうたら言っているが、僕が女の子も大事にしたい。強い女の子を育てたいんだ。
勿論男の子だって大事にしてやりたい。
ジジイを反面教師にさせてあんな男になるなよ、と教えてやるんだ。君みたいな男になってくれたら、僕は嬉しい」
「俺みたいに? だったら男の子はスチューデントセックスを断固拒否する性格になりますね」
「ついでにケチになるね」
えー、ケチは心外っすよ。
俺は節約を心がけているだけっす。
文句垂れるけど御堂先輩は相手にしてくれない。
自分が親になる時は、必ず性別なんか気にさせない。良い家庭環境を作り上げるのだと決意を口にしていた。
そうっすか、それは素敵な夢っすね。
どうぞ叶えて下さい。
貴方ならできますよ。
貴方は強い女性っすから、おじいさんにだって負けないっす。