「さっきの答えじゃ、不満みたいだね」
ストレートに物申すと、さと子ちゃんが肯定の返事をくれた。
ナニが不満なのか分からないけど、だったらこう返そうか。
俺にとって御堂先輩は守りたい人、だと。
「嘘です」
ばっさり斬り捨てられた。
ありゃ、俺の言葉の何処に嘘があったんでっしゃろう?
「空さま。嘘をついてます。
お嬢様があんなになってお慕いしているのに、空さまはそんなこと、思ってらっしゃらない。確かに空さまには守るべき理由があるようですが」
ちょっと待って。守るべき理由?
俺はさと子ちゃんの言葉を制す。
「なんで理由があるって思ったの?」
追究すると彼女が黙ってしまった。
間を置いて、俺は察してしまう。
そうか、彼女は俺がなんで婚約者になったのかの理由を知ってしまったんだなって。
庶民出身でありながら、どうして御堂家に嫁ぐことが出来たのか、その理由を知ってしまったんだ。
「借金のこと、知ったんだね」
やけに抑揚のない声になってしまった。
相手の体が微動したけど、「空さまはお金のために」だからあんなにお嬢様と親しげにっ……、そこにお心はあるのかと声音を張ってきた。
「あるよ」当然の如くイエスと言うけど、
「嘘です! 貴方のしていることは偽善であり、自己満足。お慕いしているお嬢様のお心を踏み躙っています!」
彼女は感情的に物申した。
「お心があるなら、どうして、お嬢様を裏切るッ。裏切るようなことを快諾したのですかッ。不潔です!」
最低だと言わんばかりに毒言して、さと子ちゃんが逃げるように去って行く。
夜風に頬を撫でてもらいながら俺は彼女の言葉を反芻した。
不潔、か。
それってさと子ちゃん、俺が裏で何をしようとしているか知っているってことだよね?
裏切るなんてわざわざ使ってくれたってことは、つまり、そういうことだよね?
弱ったな。
なんでさと子ちゃん、俺がしようとしていることを知っているの?
もしかして会話を聞いていた?
それならこれまでの彼女の行動も合致する。
いやはや浮気男大ピンチですな。
さと子ちゃんが周囲に言いふらすとは思えないけど、事が知れたら、御堂先輩や御両親に殺されかねない。
―――…罵られても構わない。
最低な男だと言われても構わない。
俺は俺が可愛いし、自分の両親が大好きだ。
御堂家の皆さんも優しくて大好きだ。
御堂家のためにできることならなんだってするよ。
それが御堂家のためなら、例え誰を傷付けても。誰を傷付けてでも。



