前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


 
美味しいおやつを平らげ、予定していた通り机をお掃除。
 
気が乗ったから、部屋全体を軽く拭きあげて身の回りの汚れを払拭した。

おかげで心身ぴかぴかになった気分だ。


こんな環境で勉強をしたらさぞ捗ることだろう。


だけど折角綺麗にした部屋をまた消しゴムのカスだらけにするのも気が引けた。

だから勉強は勉強でも大の苦手なパソコンと向かい合うことに。

パソコンなら消しカスも出ないから、綺麗にした部屋を汚さないだろう。
 

一本打法でローマ字入力の練習。

やっとこさアルファベットが何処にあるのか分かり始めている、この機械音痴の出来の悪さ。
 

これからますます情報化社会が進むってのに、俺、生きていけるんだろうかね?


高校生にもなって文字入力に苦戦をしているだなんて。

社会人にすらなれない気がする。


エクセルで使用する関数とかやるのは楽しいんだけど、ワードで作り上げる文書作成は恐ろしく作るのが遅い。

作成時間が横っちょに書いてあるんだけど二十分で作れだと?

機械音痴を舐め腐った時間配分だ。


俺なんて二時間は容易に掛かるんだからな!

文字入力で一杯一杯なのに表を挿入するなんて俺にとっちゃハイレベルすぐる!
 

俺は仕方がなしに博紀さんを呼んでパソコンのことを教えてもらった。

USBメモリの使い方もちゃーんと教えてもらったよ。

一応、俺が預かっているUSBメモリは使えないから(パソコンがバグる!)、博紀さんのUSBメモリで保存の仕方とか教えてもらった。


「へええ、文書だけでなく画像もこんなちっこいヤツに入れられるんっすね」

「ええ。そうですよ。試しに作られた文書を保存してみては如何でしょう? 何度もやれば憶えますから。これは差し上げますので」

「え。いいんっすか!」

「構いませんよ。沢山持っていますので。空さまはいつも頑張っていますよね。見ていて微笑ましいですよ」

「そんな俺なんて……」

「ふふっ、気が済むまで教えて差し上げます。貴方様の努力に報いないと」


ありがとうございます、俺は仕事で忙しい合間を縫って教えてくれた博紀さんにお礼を言う。

にこっと癒しの笑顔を向けてくれる彼は、俺にある程度のことを伝授すると仕事に戻って行った。

まじ博紀さん、優しいよな。
さと子ちゃんが惚れるのも分かる。

あの人と接していると頼りがいのあるお兄ちゃんを持った気分だ。
 

「USBメモリに保存。うん、ワードの文書を保存してみよう。あ、でもなんかデータは作っておかないとな」

 
ポリポリ頬を掻き、俺はワードを立ち上げてキーボードと睨めっこする。
 
俺、わざわざキーボードのボタンの位置をひらがなで憶えたんだぜ?

凄いだろ!
アルファベットの方が簡単だって御堂先輩にツッコまれた時の絶望はないね!

いやローマ字入力より、ひらがな入力の方が絶対簡単だって、ずぼらして、わざわざひらがなの位置を憶えていたんだよ!


そしたらパソコンの主流がまさかっ、ローマ字入力だなんて!

なんてこったい!
俺の努力って一体なんじゃらほい?!

ひらがな入力でもいいじゃんかよ!
 
 
「あーっと、文を打つだけでいいっか。
えーっとアルファベットの…、確か『き』がついたボタンだったような。

あ、これだ。
次が『ら』のついたこれで、次が『も』『い』『み』で、もっかい『み』で、もういっちょ『み』で、お次が『ち』『と』『ち』『い』」