□ ■ □
―――…はじめて誰かを誘い、そして失敗した。
当然だよな、日頃の行いがこんな結果を招いちまったんだから。
我ながらスチューデントセックス断固反対の影響の強さには感服しちまう。
御堂家に帰宅した俺は家着代用の浴衣に着替えながら、今日の昼休みのことを思い返していた。
深い溜息をついてしまうのは自分の心境の表れだろう。
まったく鈴理先輩も手厳しいことばっか言ってくるよな。
今日のお誘いが35点だって。
65点ナニが足りなかったんだ?
人に散々羞恥プレイをさせておいて!
これでも忙しい時間の合間を縫ってケータイ小説を読み勉強してきたってのに。
雰囲気作りがいけなかったのかなぁ。
それとも誘う時の口説き文句?
はたまた色気?
ぐぎぎ、最初から第二ボタンまであけておくべきだったか?
鎖骨を見せるべきだった?
なんだい、セクシーポーズでも取るべきだった?
ぐわぁああっ、こうして悩む時点で俺って痛い受け男である!
帯を締めて軽く浴衣を整えた俺は、足先を机上に向けた。
今日は珍しく家庭教師は休みだ。舞台を観に行った日にも述べたとおり、源二さんが俺の体調を気遣って家庭教師のスケジュールをコントールしてくれるようになったんだ。
実子である源二さんも淳蔵さんには逆らえないことが多いらしい。
けれど俺のためにこうしてスケジュールに余裕を持たせてくれるよう直談判してくれた。
本当はもっと勉強して御堂先輩に見合う男にならないといけないんだけど、御堂家のご家族は本当に優しいから。
本当に御堂家のご家族はやさしい。
借金の肩代わりの俺をわが子のように可愛がってくれるんだから。
机上に置いてる二つの写真立てを手に取る。
実親と育ての親の写真を見つめ、見つめ、見つめて俺はごめんっと二両親に謝罪した。愛育してくれた息子はこんな風に育ちまったよ。こんな風に。
いつからこんなに汚い息子になっちまったんだろうな。
ごめん、本当にごめん。
写真立てを置き、側に置いてあるUSBメモリを手に取った。
これは淳蔵さんが俺に託したUSBメモリだ。
この中には破壊プログラム? って大層名の付いたチップデータが入っている。
挿し込めば、たちまちコンピュータウイルスが本体に入り、プログラムに感染するとか。家庭教師でも習った。
USBメモリを媒体にして感染するウイルスがあるって。
そう、このUSBメモリにはコンピュータに差し込んだだけで自動的にプログラムが実行される仕組みが用意されている。
『豊福くん。これを君に託そう。機械音痴な君でも簡単に出来る作業だ。起動しているパソコンの、指定された場所にこれを差し込むだけでいい』
目を細め、俺はそれを握り締めた。
これを使用する相手は竹之内家三女。
彼女は今、常日頃からUSBメモリを持ち歩いている。
今日は失敗したけど、これを摩り替えることが最大の俺の使命。
早く性交をして相手と繋がり、これを摩り替えないと。



