遅れちゃったとへらへら笑う優男さん。
「遅れたじゃねえだろうが!」
あれほど遅刻するなっつったのにっ!
怒鳴る大雅先輩に萎縮して、だってさぁっと、指遊び。
道に迷ったんだもんっとボソボソ弁解するもんだから、大雅先輩、青筋を立てて拳骨一発。
ゴチンと頭を殴られた優男さんは酷い、酷いや、と頭を押さえている。
「お、お兄ちゃんを殴っていいのかいっ。大雅っ!」
「寧ろタコ殴りにしてやりてぇよ、ド阿呆!」
ちょ、嘘だろ……この人っ、まさかのまさかっ、大雅先輩のお兄さん?!
ゼンゼン似てないんだけど……っ、顔的な意味じゃなく、性格的な意味で。宇津木先輩の許婚さんっ、この人なのかよ?!
ぶっちゃけ話………な、なんて頼り無さそうな人なんだ。
おいおいおい、二階堂財閥長男がこれでいいのかよ。
ちなみに優男さんの名前は二階堂 楓(にかいどう かえで)さん。
俺の五つ年上、大雅先輩の四つ年上で、今年21歳になるんだとか。
そんな風には見えないんだけど。
寧ろ、大雅先輩の弟さんに見えるんだけど。
それくらい彼の身形は頼りなかった。
纏うオーラもなんだかなぁって感じだし。
「ったく」
舌を鳴らす大雅先輩は、
「で?」
本当はなんで遅れたんだと質問。
兄貴は方向音痴じゃないだろ? と凄みをきかせる。
気迫に押された楓さんは頬を掻いて、「人に道を尋ねられて」そこまで送って行ったのだと白状した。
「その人、すっごく急いでいたみたいだから連れて行った方が手っ取り早いなぁっと思ってさ。僕が遅れる分には構わないけど、その人が遅れたら可哀想だろ?」
「また始まった。兄貴のお人好しっぷり。はぁーあ…、百合子が首を長くして待ってるっつーのに」
呆れ返る大雅先輩は早く行ってやれと背中を押す。
それは大変だ、申し訳ないことをしたと楓さんは大慌てで駆け出した。
「百合子さんっ、ゆりこさーっ、うわっぢ、ごめんなさい!」
またしても人にぶつかりそうになった楓さんは、ぺこぺこと相手に謝りながら宇津木先輩の下に向かう。



