「玲ちゃんお久しぶり。それから、二方は初めましてだっけ?」
うーん、向こうには憶えられていないみたい。
ちゃんと挨拶をした憶えもないし、顔を忘れられても仕方がない気がする。
だから楓さんに自己紹介を添えて挨拶を返した。
名前は知ってくれていたみたいで、「大雅がお世話になってます」と兄らしい言葉を紡いでくる。
「君が豊福くんか。御堂家の婚約者でありながら、出身は庶民だという」
「え、あ、まあ」
「凄いよね。庶民出身なのに御堂家に嫁げるなんて。
御堂家ってこの世界では指折りの財閥なんだ。大出世だね! 僕にも是非、その出世の秘密を教えてもらいたいんだけど」
なんだろう、この違和感と恐怖。
笑顔の皮下で俺の内面を探られている気がする。
まるで信用されていないような、疑心な眼を向けられているような。
気のせい、かな。
愛想笑いを浮かべて言葉を濁すと、「おい兄貴」そういう質問は無礼なんじゃねえの? 大雅先輩が助け舟を出してくれた。
助かった。
裏事情のことは安易に人に話せないもんな。
話したら御堂家の印象を悪くする。
ホッと胸を撫で下ろす俺を一瞥した御堂先輩が、「そろそろ失礼するよ」先に中に入っておくと告げ、俺達を呼んで歩き出した。
速足で歩く彼女に俺とさと子ちゃんは慌てて背を追い駆ける。
その際、鈴理先輩達にちゃんと会釈はしておく。
そのまま去ったらそれこそ悪印象を植え付ける気がしたから。
「あの方達は?」
鈴理先輩達のことを知らないさと子ちゃんが、ようやく俺等の関係性を尋ねてきた。
「ただならぬ空気でしたが」
さと子ちゃんの問い掛けに、「家で話すよ」御堂先輩が一言で済ませる。
釈然としない面持ちを作るさと子ちゃんは俺の表情を見るや、
「出身なんて関係ないですよ」
時期御堂家の若旦那さまは空さまですから、と励ましてくれた。
素直に喜べないものの、彼女の気持ちは嬉しかったから俺は目尻を下げてアリガトウとお礼を言う。



