前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「あの、空さま。ペロペロキャンディが欲しいんですか? さっきからキャンディばかりに目が」

「えっ、いや、そんなことないよ!」


さと子ちゃんに指摘されて俺は誤魔化し笑いを浮かべた。


いや本当にそんなことないよ。


確かにペロペロキャンディって、アニメや漫画とかではうまそーに舐めていてさ。

無駄に美味しそうな描写も加えられてさ。

大きくて見た目も綺麗だから子供の頃は憧れていたけど、実際買って食べてみると同じ味ばかり続いて飽きちまうんだよな。


あははは。
ペロペロキャンディうまそーとか思っていても現実に全部平らげられるかって言われたらそうでも、そうで「いるか? やるぞ」大雅先輩、愛してますっす!


ほれ、と大雅先輩が封されているでっかいペロペロキャンディを手渡してくれた。

ありがたーく受け取る俺に、彼が一言。


「これやっから、帰りのエレベーターも頑張れよ」

「はい! 大雅先輩のために超絶頑張るっす!」


大感激している俺の背後では、「豊福」君って男は…、遠目を作る御堂先輩。

「板チョコより反応が良いな」

空は駄菓子屋の菓子が一番好きなのでは? と分析をする鈴理先輩。

「わ、分からないでもないですけどね」

子供の憧れですもの、ペロペロキャンディって。さと子ちゃんが困ったように笑っていた。
 

総合評価を述べれば、女子の皆さんに呆れられた。
 

え、皆、ペロペロキャンディって憧れない?

今も目にしたら買いたくならない?!
平らげられないのは重々承知でも、つい手にしたくならない?!
そう思うのは俺だけ?! 俺ってガキ?!

……いいや、呆れられても俺はペロペロキャンディにどーしたって憧れを持つんだい。

童心を大事にするんだい。


これは後で大切に食べようっと。
 
  

「たーいが。お兄ちゃんにもおくれよ、そのペロペロキャンディ」
 

 
と、能天気な声が集う会場側から聞こえてきた。
 
視線を流せば、能天気に笑って俺達に歩んでくる一人の青年の姿。

あの人は確か、大雅先輩のお兄さん。

名前は楓さんだっけ。


一度だけお会いしたことあるけど、すっごいドジっ子だったよな。

二十歳過ぎなのに大雅先輩の方がお兄さんに見えるという。


へらへらっと笑いながら俺達の前に立った楓さんに、「阿呆」テメェにやらんと大雅先輩が鼻を鳴らす。

不満の声を上げる楓さんはケチな弟だと不貞腐れた。


次いで、俺達に視線を流してこんばんはと挨拶してくる。