前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


  
会合は以前と同じ、某大手企業ビルを貸しきって行われるらしい。


ただ前と違うのは一室を貸しきって、ではなく、一フロアを貸しきって会合が行われるというデンジャラス。

なんてこったい、お金持ちさんは毎度ながらやることなすこと庶民とスケールが違う! 費用はどれくらい掛かっているのだろう?!


と、まあまあ俺の心境は置いておき、目的地に到着した俺達は集うべきフロアに向かう、わけ、なんだけど。



「やっぱり欠席しましょう御堂先輩! 俺っ、無理です! 絶対絶対絶対に無理です!」
 


エントランスホールで問題発生。

なんと、この俺がフロアに行きたくないとビィビィ泣き言を連ね始めたのだ!
 

……もう察してくれると思うけど、俺はすこぶる高いところが嫌い。

謂わば高所恐怖症の持ち主だ。
 

此処のエレベーターは景色が見られるという、素晴らしい構造をしている。

前回もエントランスホールで愚図った記憶があるんだけど、とにかく高所が駄目な俺はフロアの階数を聞いて絶句(二十階だってさ。前回の二倍じゃないか畜生!)。

近場の柱にしがみついて絶対に行けないとガタブルになってしまった。
 

「豊福。さすがに二十階まで階段はつらいと思うぞ? ほら、すぐ終わるから」

「アイタタタタ! 俺、お腹痛くなったっす。だから欠席しますっす!」

「そ。空さま。そんな見え透いた仮病を使われても」


だぁあああって怖いもんは怖いんだよさと子ちゃん!

俺は11年間、こいつと付き合ってきたんだ!


か、簡単には克服でき、できなっ!


十階でもきつかったのに、今回のフロアがその二倍先にあるとか、このビルは俺をそんなに苛めたいのか!

人間も人間だ! そんなにビルを高くしてどーしたいんだよ!

本気でラピュータでも作るつもりか!


無理だと連呼して柱にしがみついていると、「なあにしてんだお前?」呆れた声音が飛んできた。


グズッと涙ぐんで視線を流せば、嗚呼、俺様ミートロール系男子が。お隣には俺の元カノさんがいたりいなかったり。

そうっすよね、二人は婚約してるっすもん。

いつでもどこでも一緒……っ、嫌だ、行きたくない!


高いところヤーダ! ヤーダ!


ガタブルブルな俺を余所に、御堂先輩が二人を一瞥して鼻を鳴らした。次いでニヒルチックにご挨拶。
 

「誰かと思えば、攻め女受け男カップルになった大雅と鈴理じゃないか。御機嫌よう」

「だっ、俺は受け男じゃねえ! こいつと一緒にすんな!」


それは俺に対する侮辱っすか? 大雅先輩。

心中で毒づいている間に、負けん気の強い鈴理先輩がフフンと鼻を鳴らして挨拶返し。