前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


 
先輩やさと子ちゃんと話して盛り上がるのも手だったけど、前者が本当にお疲れらしく、彼女は車窓に寄りかかってうたた寝をしていた。


二時間半あるお芝居だったし、先輩は主役に近い立ち位置だった。

出番も多かったんだ。
疲労していて当然だろう。


「先輩。横になって下さい」


着いたら起こしますから、そう言うと御堂先輩が重たそうな瞼を持ち上げて首肯。

ごろんと寝転がった。

ちゃーんと俺の膝を枕にしてきたよ。
野郎の膝はかたいだろうに。

苦笑していると向かい側に座っていた蘭子さんが一笑を零した。
 

「お嬢様がこんなにも無防備に。本当に睦まじい限りです。今日、事故が遭ったそうですね? それでお嬢様を空さまが守ったとか。御足の方は大丈夫ですか?」

「もう情報が入ったんっすか? 早いっすね」
 

さと子ちゃんが一報したのかな?


「大丈夫っす、足は打撲程度でした。
……この王子が無茶ばかりするものだから、居ても立ってもいられなくなって。
彼女が起きたら自分を大切にしろって、蘭子さんからも叱ってやって下さい。

御堂先輩はどう男らしく振舞ったって女性なんです。体は大事にして欲しいっす」
 

「ふふっ、お伝えしておきますよ。空さまのお気持ちを添えて」
 

どことなく茶化された気がして俺は誤魔化すように頬を掻いた。

お気持ちを添えてなんて、そんな大それたことは言っていないんだけど。


ただ女性として体を大事にして欲しい、それだけのことを言っているだけなんだけどな。
 
 
「空さま。お嬢様は本当に貴方様をお慕いいしているのですよ。貴方と純な関係を求めるために、お嬢様は」

「え、純な関係?」
 
 
「―――…いえ、なんでもございません。蘭子の戯言です。ただお嬢様を大事にしてくださっていることが、とても嬉しいのです」
 
 
 
静かな寝息を立てている無防備な女性に視線を落とし、俺は頬を崩す。


やっぱり貴方は俺にとって守りたい人だ。

その無防備な寝顔を見ていると切に思う。そう、切に。