先輩やさと子ちゃんと話して盛り上がるのも手だったけど、前者が本当にお疲れらしく、彼女は車窓に寄りかかってうたた寝をしていた。
二時間半あるお芝居だったし、先輩は主役に近い立ち位置だった。
出番も多かったんだ。
疲労していて当然だろう。
「先輩。横になって下さい」
着いたら起こしますから、そう言うと御堂先輩が重たそうな瞼を持ち上げて首肯。
ごろんと寝転がった。
ちゃーんと俺の膝を枕にしてきたよ。
野郎の膝はかたいだろうに。
苦笑していると向かい側に座っていた蘭子さんが一笑を零した。
「お嬢様がこんなにも無防備に。本当に睦まじい限りです。今日、事故が遭ったそうですね? それでお嬢様を空さまが守ったとか。御足の方は大丈夫ですか?」
「もう情報が入ったんっすか? 早いっすね」
さと子ちゃんが一報したのかな?
「大丈夫っす、足は打撲程度でした。
……この王子が無茶ばかりするものだから、居ても立ってもいられなくなって。
彼女が起きたら自分を大切にしろって、蘭子さんからも叱ってやって下さい。
御堂先輩はどう男らしく振舞ったって女性なんです。体は大事にして欲しいっす」
「ふふっ、お伝えしておきますよ。空さまのお気持ちを添えて」
どことなく茶化された気がして俺は誤魔化すように頬を掻いた。
お気持ちを添えてなんて、そんな大それたことは言っていないんだけど。
ただ女性として体を大事にして欲しい、それだけのことを言っているだけなんだけどな。
「空さま。お嬢様は本当に貴方様をお慕いいしているのですよ。貴方と純な関係を求めるために、お嬢様は」
「え、純な関係?」
「―――…いえ、なんでもございません。蘭子の戯言です。ただお嬢様を大事にしてくださっていることが、とても嬉しいのです」
静かな寝息を立てている無防備な女性に視線を落とし、俺は頬を崩す。
やっぱり貴方は俺にとって守りたい人だ。
その無防備な寝顔を見ていると切に思う。そう、切に。



