空笑いしつつ、彼等の鬼ごっこを見守りつつ、俺は婚約者におぶわれつつ、足先を学院の正門に向ける。
これからファーストフード店で駄弁ろうとイチゴくんが提案した。
悪い案じゃなかったから乗っかりたかったんだけど、遺憾なことにこの案は採用されなかった。
正門前にお迎えが来ていたんだ。
「り。リムジンや」
あぼーんな顔をしているトロくんを余所に、迎えに来てくれた蘭子さんが丁寧にお辞儀をして俺達に歩んでくる。
あれ、おかしいな。
まだ迎えの連絡は入れてないんだけど。
「丁度良かった」
蘭子さんは今、連絡を入れようと思っていたのだと口を開く。
彼女はすぐ車に乗るよう告げてきた。曰く、財閥会合が急遽決定されたらしい。
またお勉強会なのかなぁって思ったけど、財閥界の現状把握のための会合が開かれるとかなんとか。
話し合う場に出るのは大人達らしく、二世三世のジュニア達には直接的に関係のあることじゃない。
が、今後のために会合を傍聴しておく必要があるらしい。
なんだかよく分からないけど社会勉強しなきゃいけないのはよーく分かった。
会合は八時からあるらしいけど、早めに開催地のビルに赴いた方が良いらしく、こうして蘭子さんが迎えに来てくれたんだって。ご苦労様です。
「お友達様もどうぞお乗りになって下さい。途中までお送りします。さと子はお嬢様達と同行して下さい。貴方にとっても良い勉強になると思います」
「私は構いませんがご覧の通り、ラフな服装です。大丈夫でしょうか?」
「ええ。構いませんよ。空さまとお嬢様は制服で宜しいですので」
「会合か」これまた急だな、折角の予定がパァだと御堂先輩が顔を顰める。
「しょーがないっすよ」行くだけ行ってみましょう。舞台で疲れているであろう彼女を慰め、俺達は蘭子さんの指示に従った。
イチゴくんとトロくんは大変だなって心底同情してきてくれたけど、お金持ちさんにはそれなりの地位と事情がある。
これくらいの忙しさは仕方がないと思うよ。
貧乏は貧乏で暇なしなんだけどさ。
二人は駅前のファーストフード店で駄弁るらしく、駅周辺で降ろしてくれるよう頼んでいた。
よって彼等とは駅近くでお別れ。また遊ぼうとイチゴくんが手を振り、トロくんが積極的にさと子ちゃんへアピールしていたのは余談としておく。
二人が下車すると、車内は静まり返った。
あの二人が、いやトロくんがどれだけ賑やかなキャラだったのか物語る静けさだ。



