それに御堂先輩はなんだかんだで性別のことを悩みの種にしている。
俺をおぶって家庭科室を出た彼女は、小声でぼそりと男だったらなぁって呟いていた。
聞き流すのも手だったけど、それは適切な判断じゃない気がする。
だから俺は相手にポツリ返し。
「じゃあ俺は女になろうかな」と。
即答で想像もつかないと返事される。
男の俺を受け入れてくれる彼女だからこそ言える台詞だろう。
だったら俺も同じだ。
「王子系プリンセスの貴方が当たり前だから、男の貴方なんて想像つかないっすよ。俺は今の貴方がいいっす」
女性の貴方がいい、俺は相手に綻んだ。
何度言ったって簡単に払拭できる悩みじゃないと思う。
俺に出来ることは少ないけど、男に憧れを抱き、女に対して劣等感を抱く都度、俺は今の彼女を肯定していこう。
それが俺に出来る精一杯だ。
「豊福って時々キザになるよな」
口説くのが上手いと御堂先輩が笑声を漏らす。
目尻を下げて肩を竦めた。
小っ恥ずかしく人を口説くことが好きな先輩には言われたくない台詞だ。
人のことを子猫ちゃんだぜ?
キザ度は先輩に負ける。
「あっかーん! あの二人を見てたらオレ等も負けてられへんって思ってきたやん! さと子ちゃーん! オレ等もラブラブしようや! 押し倒してええで!」
「わ、私は押し倒しませんったら! うわわわわっ、来ないで下さい!」
と、俺等の側らにいた連れの内、二人が鬼ごっこを始めた。
「さと子ちゃーん!」
体に痕を付けてもええやで!
トロくんがとてつもなく変態クサイ発言を発して誘い受け男らしく(?)お誘い。
「イーヤー!」
私には憧れの七瀬さんがいるんですー!
さと子ちゃんは必死にそのお誘いから逃げていた。攻め女というより、今の彼女は逃げ女かもしれない。
果たして素敵に無敵≪攻め女と受け男カップル≫になれるのか分からないけど、カップル候補としてフラグが立っている二人の鬼ごっこを俺達は右へ左へ視線を流して見守る。
「あーあ、トロのヤツ。すっかり受け男に目覚めたな。どーでもいけど勝負のこと忘れちゃないよな? あいつ」
いや、あれが受け男なんて俺は認めないけどね! 彼と同属にはされたくない!
「基本的に男は嫌いだが、彼自身の熱意には敬意を表したいな。いつか本物の受け男になれたらいい。僕は攻め女として彼等を応援するぞ」
それ、さと子ちゃんが泣くと思いますっすよ……、御堂先輩。
いつの間にかさと子ちゃん、あたし様プリンセス様と同類の攻め女にされてるっすけど、彼女は純粋なおんにゃのこっす。



