前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



文字通り恐怖心と羞恥心を植えつけられた俺は、頭を抱えて身悶える。

どうしよう。

この手で今度はセックスをしましょうとか迫られたら!

断れば鏡、受け入れたらセックスの二者択一とか絶対ごめんだぞ。


ヤダもうッ、御堂先輩の精神攻め!
 

彼女の背でどーんと落ち込んでいる俺を見たイチゴくんが、同情を込めて「今度飴ちゃん買ってやるよ」と言ってくれた。

勿論厚意はありがたーく受け取るんだけど、欲を言えば。
 

「じゃあドロップがいい。あれ一缶で色んなお味が楽しめるし、持ち運びも便利だから」

「お前、ちゃっかりしてんな」

 
当たり前じゃないか。

買って貰えるなら、よりお得な商品を選ばないと損だろ?

なんちゃって財閥の子息候補だろうと何だろうと、俺はこれからもお得優先主義を貫くよ!
 

はてさて、婚約者(♀)におぶられた俺なんですが、当然の如く神城先輩が嫌味を飛ばしてくる。


俺とは面識がないから、御堂先輩に向かって「また“男”に戻るのかい?」ってのたまった。

そしたら負けん気の強い御堂先輩が「君に言われる筋合いはない」と舌を出して反撃。

うーん、俺的にあまり彼女の性別で弄くって欲しくないから、やんわりと仲裁に入った。あくまでやんわりと。
 

「先輩は俺の王子だからしゃーないっすよね。すんませんねぇ、残念な姫のお相手をしてもらって」

「残念なんて思っていないぞ。豊福は僕の自慢すべき姫なんだ」

「まったぁ、口が上手いんっすから」


わっしゃわしゃと相手の短髪を撫でてやると、

「姫様抱っこにしていいかい?」

猛烈に君に触れたくなったと御堂先輩が真顔で告げてきた。


……此処で空気を壊すと再び姿見の刑だろう。


が、此処であらやだぁされるのも非常に気が引ける。

そのため学習した俺は、「そういうことは二人っきりの時に」と語尾にハートマークをつけて返した。
 

おぉおお俺は頑張った!

キャラじゃないのにアッマーイお言葉を返したよ! 空気読んだよ! 俺は受け男の任務をまっとうした!


空気を読んだためか、御堂先輩は「仕方がないな」とご機嫌に返事してくれる。

こっそり胸を撫で下ろす俺のことなんぞ知る由も無いだろう。
 

俺達のやり取りに神城先輩は若干呆れていたようだけど、俺の配慮を酌み取ってくれたのか、はたまた相手する気力がなくなったのかそれ以上のことは物申さなかった。