「足の方はどうだい? 豊福」
「大丈夫っす。元々軽傷でしたし、冷やしたことで幾分痛みも取れました」
「なら良かった」目尻を下げる彼女は、帰ろうかと声を掛けてくる。
首肯して俺は脱いでいたローファーを履く。
片方行方知れずになっていたけど、部の人が拾ってくれたおかげで無事にローファーを履くことができている。
ローファーを履いたと同時によっこらしょ、の掛け声で婚約者が俺を背におぶってきた。
絶句。
な、何をして……っ、ちょ、歩けますから!
確かに重たいセットのせいで打撲はしたけど、歩けないってことはこれっぽっちもないっすよ!
そう抗議をしても彼女は聞く耳を持ってくれない。
「僕を心配させた罰だ」
振り返って一笑。
これくらい王子のすることだとウィンクされて俺は胸どきゅん!
あばばっと顔を赤らめて乙女らしい姫を演じ……たら良かったんだけど、残念なことに俺には演技力というスキルがすこぶる低いらしい。
申し訳なさと人目を気にして何度もおろしてくれるよう頼んだ。
しつこく相手に物申していると、「姿見がまだあそこにあるぞ」と御堂先輩が意味深にポツリ。
ビシッと硬直した俺は石化したまま、「王子様宜しくっす」と空笑いでお頼み申したという。
ウワァアアアアアア!
鏡プレイとか二度とごめんだっ、まじトラウマなんだけど!
じ、自分の情けない姿をあんなに見せ付けられるなんてっ、三分間で俺は地獄を見たよ! あれが受け男の無残な姿! あれがいつもあらやだされている俺!
シャツを捲ればお腹に赤い斑点がぽつぽつだったりィイイウギャァアアアアアア思い出すのもあばばばびぶべぼのどっかーん!
半狂乱になっている俺にプリンセスがトドメの一言を刺す。
「これから素直じゃなくなったら鏡にしような? 豊福。我が振りを正すためにも鏡は必要なアイテムのようだし」
世界、が、暗転、しそうだった。
もう二度と御堂先輩の前で下手な行動は取れない。
毎度鏡の前であんなことされたら、俺、おれ!



