よくよく観察してみると神城先輩の言動が御堂先輩の神経を逆立てているらしい。
なんというか、神城先輩って男は男らしく女は女らしく振舞うべきだって思考を持っているらしく、僕っ子の御堂先輩を良くは思っていないようだ。
所謂男口調を嫌うお方らしい。
基本的に御堂先輩は男女を区別するような思考を嫌っているから、彼のことを必然的に嫌ってしまうのも仕方がないことだろう。
だからと言って神城先輩の考えを頭から否定することもできないと思う。
例えば攻め女、受け男が受け入れられない輩だって世の中にはごまんといる。
俺は既に諦めがついたけど(諦められない部分もあるけど!)、苦手な人はやっぱ苦手なんじゃないかな。
人参嫌いに人参を好きになれって言っても無駄じゃん?
同性愛を受け入れられる人もいれば、どうしても受け入れられない人もいる。
それと同じだ。
結局、相手の思考を受け入れられるかどうか、それが決め手なんだと思うよ。
受け入れられないならしゃーないべ。
こっちが何を言ったって他者の心は簡単にゃ変えられない。
かといって、相手を受け入れられず傷付ける言動を起こすのなら話は変わってくるけどさ。
「今日は素晴らしい公演になったね。御堂。普段は“男”であろうとする君だから、大失敗になるんじゃないかとハラハラしたけど、無事に成功してよかったよ」
「フン、もう二度と君との公演はごめんだね神城。君のような男と会話するだけで虫唾が走る」
患部を冷やして御堂先輩を待っていると、向こう側で二人が嫌味つらみを交わす会話が聞こえてきた。
神城先輩は若干ナルシストが入っているのか、
「自分と公演できたことに誇りを持つんだね」
とかなんとか言って、真っ白な八重歯を煌かせている。
前髪をかきあげる仕草がいかにもナルシーっぽい。うん、動作が一々ナルシーっぽい。
ステージでは観客を魅了する二枚目主人公さんだったのに。
「誇り? 僕にとっては人生の黒歴史だね」
御堂先輩は神城先輩の言動を一蹴して、愛用している学ランのボタンを留めていた。
ありゃりゃ。
折角可愛いセーラー服を身に纏っていたのに、もう学ランにするんっすか。
ちょっと残念な気持ちになるっす。
学ランは毎日見ているし、もう少し貴方様の女子高生姿を見たかったんだけど。
内心で小さな我が儘を零していると、彼女は部生の皆に軽く挨拶してこっちに歩んできた。



