前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



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豊福空、只今、機能停止。停止。停止。ガガガッ、ザザザッ、ギギギッ、機能停止。

 
はい、すみません。

フリーズしていました。


俺のことはさておき、事故のことについて述べたいと思う。

御堂先輩曰く、あの事故でセットの下敷きになった女子生徒は大事に至らなかったらしい。

重たいセットの下敷きにはなったものの、俺と同じく背中や腕に痣を作った程度で大騒ぎにはならなかったんだと。
 

良かったと思う反面、舞台の危険度を俺は知った。
 

一見舞台って華やかで、ただステージの上で演技をしたり、歌ったり、踊ったりするだけかと思っていたけど、演技中のシチュエーション。準備。片付け。ひっくるめて危険が付きまとうものなんだ。


さと子ちゃんはそれを重々承知の上で舞台女優を目指しているのだから凄い。

いっそのこと宝塚を目指したらいいんじゃないかって思うけど、宝塚って倍率がすっごい高いらしくお金も掛かるんだって。

それでも夢を諦めきれず、小さな劇団でも良いから自分の夢を叶えようとするさと子ちゃんは凄いよな。



閑話休題。


事故は起きたものの、病院にて軽傷と判断されたため御堂先輩の所属する演劇部は大きな混乱もなくその日の公演を終えた。

一般の観客は既に帰宅していたし、混乱という混乱もなくて良かったと思う。

事故さえなければ先輩と出店も回れたのに……ちょっぴり残念だ。


俺はといえば、家庭科室に移動して負傷した両足をひたすら冷やし続けていた。
 
この家庭科室は演劇部の人達が使っている控え室で、衣装や小道具が押し込められている。
その部屋の四隅で患部をお冷し中。

言うほど酷くは無いんだけど、御堂先輩が過度に心配してきたからおとなしく患部を冷やしている。


イチゴくん達が側にいてくれたから演劇部の人からは注目されても受け流すことが出来た。


これが俺一人だったら視線に耐えかねて廊下に出ていたと思う。


御堂先輩の男嫌いは学内でもすっげぇ有名らしく(おにゃのこスキーで名が通っていたんだって)、婚約者がいることにすこぶる驚かれていた。


まあ、普段の態度が態度なだけに驚く情報じゃないよな。

御両親でさえあんなに泣いていたんだし、周囲の驚愕は既に慣れっ子だ。
 

好奇心から数人に話し掛けられたけど、御堂先輩が無駄口叩いてないで片付けろって止めてくれたから会話らしい会話はしなかった。
 
あんま婚約のことは他人に触れられたくないみたい。
 

特に貴族主人公さんだった神城 優(かみしろ まさる)さんが俺に声を掛けてきた時は、すぐさまスパッと斬り捨てていた。

彼は御堂先輩と同じ学年らしく、男子校演劇部のエース的存在らしい。


つまり俺の先輩に当たる方だ。


ということで神城先輩って呼ばせてもらうんだけど、どーもこの二人、あまり仲は宜しくないようだ。