前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―




一方、廊下待機組。
 
 
「ギャァアアアア! 先輩ッ、本当に勘弁してくださいィイイイ! イ゛っ、冷たいっすぅうう!」

「あまり大きな声を出すと廊下に丸聞こえだぞ? 皆に声を聞かれたいのかい? ほら、ちゃんと前を見る」

「見れるわけないっす! う゛っ、ど、何処に当ててるんっすか!」


「なあ。今、何秒経った? トロ」

「いつの間にお前までトロ呼ばわりするようになったんや? んーっと、三十秒くらいやな」

「まだ三十秒なんですね」


静寂。
 
 
「豊福。見ないともっと恥ずかしいことをしてしまうぞ?」

「い、嫌っす! 絶対見ないっす! っ、ちょ、ナニシャツを捲って」

「相変わらず可愛いヘソをしているな。豊福も前を見て確認してみないか?」

「しないっす!」
 
 
「今、一分くらいやな。豊福、ナニされてんねん」

「そりゃナニだろ、あの声からしたら。やっべ、助けてやるべきだったかな」

「何を言うんですか。お嬢様と空さまのお時間は邪魔してはいけないのですよ!」


静寂。
 
  
「素直じゃないな。豊福。時間は限られているのに。だったら」

「え゛っ、ちょ、ナニをッ……、む、無理ムリムリ! それだけはっ、ご、ごめんなさいっす! ムードを壊したことは謝りますから!」

「いいんだぞ豊福。僕はもう気にしていない」

「気にしていないならそ、それはッ……、い、ぁ」


「ちょいデガバメしてええかな。受け男ってどんなことされてるのか、見てみたいんやけど」

「やめとけって。空が可哀想だろ? ……そりゃ、ちょっとは気になるけど」

「駄目ですよ、お二人の邪魔をしちゃ!」

「せやかて」

 
静寂。静寂。携帯を開く。静寂。携帯を閉じる。静寂。


「声、聞こえへんな」

「空。どーしたんだろ? あ、おい、トロ!」

「覗くなんてプライバシーの侵害ですって!」

「ええやんええやん。こないなところでイチャつくあいつ等が悪いや。見られてもしゃーないで……、え゛。なんやあれ」

「ど、どうしたんですか?」

「ナニナニ?」


移動。


「!」「!」「!」


硬直。硬直。硬直。移動。沈黙。


「た、助けてやれば良かった。空、悪い。あそこまでえげつないことをされているなんて思わなかったんだ」

「す。凄いわぁ。オレ、なんかまた新たな世界を見た気分や。さと子ちゃん、頑張ろうな」

「わぁ?! 私は攻め女じゃないですったら!」

 
たった三分、されど三分。
医務室の向こうは大変ワンダフルでファンシーな世界だったと、後々三人は語っている。まる。