サーッと青褪める俺はかぶりを横に振って緊急逃避体勢に入る。
が、既に俺はまな板の上の魚。
押し倒されている不利な状態から逃げるには至難のワザだ。
悪魔改め俺の麗しき王子様はぴっちぴちと逃げようとする魚をさっさと捕まえ、肩に担いで移動開始。
「や、ヤダっすよ!」
こんなの絶対無理だと身を捩りながら声音を張る俺に、
「素直にならない君が悪い」
なにより口説きを一蹴した責任は取ってもらわないと、なーんて婚約者はのたまう。
俺は正論を述べただけじゃないっすか!
そ、そんなに空気を壊したことっ、お、怒ったんっすか?!
ええいっ、暴れ回って逃げ出したいけど相手が女性ゆえに本気で暴れられないこのジレンマ!
受け男は何処までも分が悪い!
処刑台に一歩一歩近付く王子に俺は何度も許しを乞うた。
俺、肉体的攻めより、精神的攻めの方が弱いんだよ。
苦手なんだよ。
鏡とかない、マジないっす!
半泣きになっていると神様は俺に救済の手を差し伸べてくれたのか、
「ちわーっす三河屋です」
能天気なジョークと共に医務室の扉が開いた。
現れたのはイチゴくん達だ。俺の後を追って来てくれたんだろう。
「すんません。空が怪我してこっちにいるって聞いたんですけどー…って、おっ、空じゃん。怪我大丈夫そうだな」
良かった良かった。
笑顔を浮かべているイチゴくんや背後にいる二人に俺はヘルプを出す。
このままじゃ俺、大変可哀想な仕置きをされちまうんだ!
助けて、イチゴくん、トロくん、さと子ちゃん、助けてたもう!
一方、ジタバタしている魚を肩に担いでいる御堂先輩は可憐なプリンセススマイルを彼等に作り、こう告げる。
「三分だけ廊下にいてくれないか?」と。
三分、されど三分。秒数にすると180秒。
彼女は180秒、廊下で待ってくれるよう三人に頼んだ。



