「ちょ、そのアイスノンで何する気っすか! 俺の負傷した足を冷やすためのものでしょ!」
「僕が負傷した箇所を冷やしてあげる。さてと、何処を打撲したっけ?」
「今足って言いましギャッ?! 冷たッ! そ、そんなところ打撲してませんからぁあ!」
ぎゃぁああああ! 先輩どこにアイスノンを当ててるんっすか! 冷たっ、冷たいィイイ!
首にしっかりちゃっかりとアイスノンを当てられて俺は悲鳴を上げた。
そんなところ打撲してないとゆーとるにも関わらず、人を押さえ込んで「ここは違うようだな」はてさて、何処を打撲していたっけ? と白々しい台詞を吐き捨てる。
「此処だったか?」
ぺらっとカッターシャツと肌着を一緒に捲ってくるやりたい放題王子に、「エッチっす!」俺は声音を張って無理やりそれを戻した。
「人が来たらどーするんっすか! は、早くお仲間の下に行ってきて下さいよ!」
「事の発端は豊福が僕に意地悪ばかりするからだぞ? まったく君って男は、僕を煽るだけ煽ってこの仕打ち。責任を取ってもらおうか?」
「せ、責任ってッ、ギャッ! また変なところにッ、勘弁してくださいよ!」
嗚呼、華の乙女が集う有名学院のとある医務室でこーんなことされているなんて、俺ってめっちゃ美味しいぞカッコ星マークカッコ閉じる。
こんな美味しい展開を味わえる男も少ないんじゃないか!
さあ、もっと俺を攻めてくださいな、御堂先輩!
……駄目だ!
トロくん風にポジティブな考えを持とうと思ったけど、自分が痛い男になるだけだった!
やっぱ攻めないで下さい!
氷プレイとか俺、居た堪れないっす!
うっわぁああああ!
自分で言って恥ずかしくなった! 消えたい!
「豊福。僕はな、少しだけ鈴理を見習うことにしたんだ」
と、此処で御堂先輩が俺の元カノを話題に出してきた。
「鈴理先輩を?」
まさか彼女の名前が出てくるとは思わず、俺は動きを止めて相手を見つめる。
何を見習うことにしたのか、おずおず尋ねると御堂先輩がアイスノンを持ったままゴホンとわざとらしく咳払いをする。
「好敵手を見習うなんて癪だが、僕としても学習すべき点があるのではないかと最近思い始めた。あいつは小説をよく読むだろう? 特にケータイ小説」
「え、あ、まあ……、ケータイ小説は鈴理先輩のバイブルっすけど」
素晴らしく嫌な予感がしてきたぞ。



