「いいじゃないですか。俺だってたまには王子をしたいんですから。……まあ、だからって子猫ちゃんとかそういった恥ずかしい台詞は使わないですけど」
「豊福。いつもの仕返しかい? 僕を攻めてくるなんて」
とん、と優しく肩を押してくる。
体が簡単にベッドシーツの海へと沈む。
そっと視線を持ち上げていくと、「君のしていることは」僕を煽っているも同じなんだよ? 目尻を下げてくる彼女が妖笑している。
四分の一フランス人の血が混じっている瞳が妖しい光を宿していた。
「豊福。分かってる?」白く細い腕が、「君の言動一つ一つが」ゆるりと伸びて、「僕を一喜一憂させる」無遠慮にシャツの隙間にもぐり込んでくる。
じかに触れてくる手はひんやりと冷たい。
冷え性だよな、御堂先輩って。
指先が常に冷たく感じる。
胴の輪郭をなぞるように手の平で擦られる。
「場所。考えてくださいよ」
あなたはいつもTPOを考えてくれない。
苦笑いを零すと、「君が悪い」だって煽るのはいつも君なのだから、先輩はクスリと笑声を漏らす。
「あまり僕を煽ると、今すぐにでも抱いてしまうぞ。僕はいつもこう思っているんだ。君のすべてを貰いたい」
真摯で情熱的な告白だ。
面食らってしまうけれど、すぐ表情を崩して返事した。
「じゃあ、俺はいつもこう思っています。やばめの攻めは逃げなければ! 今もやばそうなんで、はいストーップ!」
直後、間。間。間。
三拍くらい間があいた。
片眉根をつり上げる王子に対し、「あれ」なんか不味いこと言ったっすか? と俺。
俺の頬を包んだまま体を微動させる御堂先輩は、「君って男は」どーしてそうも空気を壊すんだい? と引き攣り笑いを零してくる。
え、いやだって、俺、スチューデントセックスは断固拒否している男っすよ。
そりゃあ、そんなことを言われちゃそう返すしかないでしょう!
間違っても今すぐ抱きたいと言われて嬉しいとは返しませんよ、俺。
空気が読めない? いえいえ、先輩が俺の性格を読んでいないだけっす。
すべてがドラマ仕立てのような流れで行くかっていったらそうでもないっすよ。
あんまり良い空気を作ったら、経験上これまたヤッバーイ雰囲気にもなりますし、ね?
あははのはで誤魔化す俺に、
「だから君はエスケープが得意なんだろうな」
まったくいい度胸をしている。
見せ場である人の口説きをあしらうなんて。
言うや否や俺の頬を摘んで左右に引っ張った。
アイダダダ! 先輩、抓らないで下さいよ! 俺は正論を述べただけじゃないっすか!
早くお仲間のところに言って下さいと一生懸命ジェスチャーで伝えるんだけど、御堂先輩は空気を壊されたことにカチンきたらしい。
自分が不在でも大丈夫だろうと一言。
次いでベッドの上に転がっていたアイスノンを手に取り、「豊福。素直になろうな?」ものすっごい意地の悪い笑みを浮かべてきた。
ゲッ、この展開はヒッジョーに不味いぞ。先輩、スイッチ入りました? 意地悪スイッチ入っちゃいました?!



