未だに怪我人に付き添っている彼女に微苦笑を零す。
ほんと、無茶するんっすから。貴方って王子は。
「あの人が無事で良かった。本当に」
独り言を零したと同着で体が傾く。
痺れた足がバランスを崩したようだ。
片膝をついてしまう。
貴族主人公さんが血相を変えて大丈夫かと声を掛けてくる。
大丈夫だと返すけど信用されていないようで、「もう一人肩を貸してくれ」彼が部員さんに指示をしている。
嗚呼、ほんと何から何まで申し訳ない。
と、怪我人に気を取られていた王子が弾かれたように俺達の方を見てきた。騒動に気付いたらしい。
瞠目してくる彼女は、怪我人を他の部員に任せて腰を上げると颯爽と戻って来た。
「神城(かみしろ)」
貴族主人公さんは神城さんというらしい。
彼にどうしたのだと説明を求めてくる。
「どうしたもこうしたもない。君を助けた直後、セットに足を挟まれたんだよ。
まったく男嫌いの君には彼の災難が目に入らなかったようだけどね。彼、君の婚約者なんだろ? カワイソーに」
いや、怪我の度合いが違うっすよ。
御堂先輩だって血を流す人間がそこにいたら。その人で手一杯になっちゃうじゃないっすか。
皮肉っている神城さんに苦笑し、御堂先輩には大丈夫だと声を掛ける。
俺のことより怪我をしたお友達さんの傍にいてあげて下さい、相手を気遣った刹那、体が浮いた。もう一度言うけど体が浮いた。
目を点にする野郎共を差し置き、婚約者を横抱きにしやがった王子は自分が医務室に連れて行くと申し出る。
「後のことは頼む神城。綾の容態からして直で病院に連れて行くようだ。部長には、僕は医務室にいると伝えてくれ」
「え、ああ。別に構わないが。御堂が彼を連れて行くの、かい? こっちで連れて行っても構わないのだけれど」
「不要な気遣いだ」彼は僕の婚約者だからね。言うや歩調を速くする。
俺は、すぐにおろしてくれるよう頼みまくった。
こんなところで姫様抱っことか居た堪れなさ過ぎる!
俺よりお仲間を心配してくださいよ! 俺は足を挟まれただけっすから!
しかーし、御堂先輩はちっとも聞いちゃくれない。
俺のローファーが片方脱げたというのに(ちょ、あれは明日も学校に履いていくものなのに!)、目もくれずさっさかとステージを下りて体育館内にある倉庫を通ると、彼女は俺を連れて一旦外界へ。
渡り廊下を渡って校舎に入る御堂先輩の行く先は、さっきも述べていたように医務室。
どう足掻いても彼女は俺をおろす気がないらしく、部屋の前に立つと引き戸式の扉を雄々しく足で開けた。行儀悪ッ!
医務室には人の気配がない。
保険医はきっと怪我した部員さんの方に回っているのだろう。事務机が散らかったままだ。
連絡を受けて飛び出した、というところかな。
身長・体重計や身だしなみをチェックする姿見、薬が詰め込まれている棚、そして診察台を通り過ぎ、彼女は俺をベッドに座らせる。
何度も大丈夫だと告げているのに、ローファーと靴下を脱がして足の具合を診てくれる。
「腫れているな」足の甲や足首が赤くなっていると先輩。
「ただの打撲っすよ」すぐ痺れも痛みも引く、俺は肩を竦めた。自分でも足を観察するけど、うん、ちょっち腫れているだけだ。青痣で終わるだろう。
「念のために患部を冷やそう」
すくりと立ち上がった御堂先輩が冷蔵庫のある窓辺に向かう。
さすがは医務室。
冷凍庫スペースには沢山のアイスノンが入っていた。
何か遭った時のために備えているんだろう。
手際よくアイスノンを取り出した御堂先輩は、側らの棚に積まれているタオルを取ってそれを巻くと戻ってくる。
その際、教室の隅に置いていたスツールも持って来てくれる。この上に足を置けってことだろう。



