「ええなぁ。オレも女の子にめっちゃ攻められたい。さっきの騒動で攻められる快感を覚えたんや。女の子に押し倒されるなんて、まさに夢のような出来事やった。
しかも豊福と婚約者さんのやり取りを見てたらっ…、アーッ! これキスマークやん! なんや付けられたんか?!」


「ちょっ、隠してるんだからこれ!」


襟元を掴んで首を観察してくるトロくんに俺は喝破する。

大暴走しているトロくんは、「無理やりか?!」それとも寝込みを襲われたんか?! と詰問。

なんでそんな恥ずかしい質問に答えないといけないのだろう。


しかめっ面を作る俺を余所に、


「自分むっちゃ美味しいやん!」


キスマークをおにゃのこに付けられるとか滅多にないで! とトロくん。


「ウケオトコ。女の子に攻められるオトコ。アカン想像しただけで鼻血出そうや。
オレもそないオトコになりたい。
女の子にドキドキハラハラ翻弄される男とか、男か、最高やん! ハーレムやんけ!」


いや、ハーレムではないと思う。

トロくんの妄言に俺は三点リーダーをいつまでも頭上に浮かべるしかない。

何故だろう、この言いようの無い罪悪感。

俺達と出逢ったことでトロくんの価値観を180度変えてしまった感が否めない。


甘い吐息をつくトロくんは、自分も受け男を目指すとかほざき始めたし!

た、た、大変だ、トロくんが男を捨てそうだぞ!


「と、トロくん。受け男なんて良いことないよ! 情けなく女の子に攻められるし、男の評価は下がるし、寧ろ自分が女の子になりたくなるし!」

「豊福。オレな、攻められたことにむっちゃ感動してるんや。未知な域やった。新たな道が拓かれた感じや」


うわああああそっちは獣道だよトロくん!

戻っておいで!


「決めたで豊福。オレは誘い受け男になる!」

「さ…、誘い受け男」


なにそれ、攻め女にハァハァさせるような魔性の男(?)を演じるの?

いや受け男になるにはまず、攻め女という猛獣…、じゃない、ちょっと趣向が変わった方を探さないとなれないような。


M男じゃ駄目かな?

MならまだS女子が多々いそうで夢も叶いそうだけど(ちなみに受け男とM男は違う種類だからな!)。


引き攣り笑いを浮かべる俺の痛々しい眼なんぞ跳ね除け、


「おにゃのこが攻めたくなるような男を目指すんや!」


と彼は片手拳を挙げた。

勿論ターゲットは可哀想に、桧森さと子ちゃんである。まる。