「トロくん。これ、どうやってメアドを送るの? 俺、機械音痴だから全然分からないんだけど」


「ちょい貸してみぃ」



トロくんとメアド交換をしようとしていた俺は、早速出だしから躓いてスマホを彼に託していた。


彼はまだ従来の携帯を使っているというのに、手馴れた手つきでスマホを操作していく。

すっごいよな。人のスマホだってのに普通に操作できてらぁ。


なんで操作できるんだ?

俺なんて従来の携帯でアップアップ。スマホとか未知な領域すぎて頭がこんがらがるってのに。


「トロくん天才?」俺の褒めに、「今更気付いたんか?」オレは天才なんやで、と彼が鼻高々に笑った。


「機械はむっちゃ強いんや。一応これでも情報系の科に通っとるさかい、機械のことなら何でも聞いてや」

「へえ、凄いなぁ! 俺は機械がてんで駄目でさ。今度から何か分からなかったらトロくんに聞くよ」


するとトロくんがタダでは教えないと片手の平を見せ付けてきた。

「ええ?」声を上げる俺に、「教える代わりに」豊福はオレに男を教えてくれや、と申し出てくる。


男?

え、オトコ?


目を丸くする俺に、「聞いたで聞いたで」彼は人の首に腕を絡めて口角をつり上げてくる。


「さっきこっそり花畑から聞いたんや。豊福、ウケオトコなんやて? ちなみにウケるオトコちゃうよな?」

「え、あ、うん。そういう意味じゃないけど」


「ウケオトコゆーたら、女の子にあーんなことやこーんなことをされてウハウハするオトコのことを指すんやろ? 豊福それなんやろ?」
 

さも俺が攻められてウハウハしているような言い方だけど、それは心外だからねトロくん!

俺は攻め女に否応無しにポジションを奪われているだけであって(譲っているとも言う)、リード権を奪われていることに喜んでいるわけじゃないんだよ!


無理だと分かっていてもやっぱり男としてリードしたいって気持ちはあるんだよ、YO!


だけどトロくんは俺の抗議なんて聞いちゃない。

目をらんらんに輝かせて、「ディープされるんやろ?」ボディタッチをされたり、押し倒されたりするんやろ? と詰め寄ってくる。


「そ、そりゃ。されるけど……」


でも自尊心も傷付くよ?

トロくんに助言しても彼は恍惚に目を輝かせるだけだ。