「元カノには約束された将来を取って欲しいんだ」
俺は細々と苦言する。
目先の恋を取ったところで将来に利益があるわけじゃない。
俺の傍にいたって財閥の将来を左右するような効力はないんだ。
所詮、俺は庶民の子なんだから。
御堂先輩との婚約が特例なだけで、元カノが俺を選んで利得があるとは到底言えない。
大雅先輩の傍なら、きっと幸せになれる。きっと。俺はそう信じている。
「空はさ。相手がお嬢様だから、その元カノと付き合ってたのか?」
イチゴくんが素っ気無く問い掛けてくる。
間髪容れず俺は否定。あの頃はまだ身分の差なんて軽く考えていたから。
付き合う前は相手がお嬢様だから、と求愛されることに尻込みしていることが多かったけど、付き合っていたあの当時は一女性として彼女を見ていた。
これは本当の話。
俺は竹之内鈴理という一女性に恋をしていた。
「お前がそう思っているなら向こうも同じことを思っていると思うぜ?
将来より、目先の恋を選んで頑張ってるんだよ。
その努力はお前でも否定することができないんじゃね? お前が相手の幸せを願う気持ちを向こうが否定できないように、さ」
ま、お前にも家の事情とか、立場とかあるから、俺から強くは言えないけど。
もし空が本当に相手の幸せを願うなら、それだけの努力をしないと伝わらないんじゃないか? 相手を諦めさせるような努力をさ。
―――…努力をするだけ相手に愛情を伝えて焚きつかせるだけかもしれないけどさ。
結論から言えば、自分達で決着をつけた別れじゃないからお互いに引き摺るんだよ。いつまでもさ。
「空にとって元カノってナニ? 未だに忘れられない好きな人か?」
イチゴくんの追究に俺は視線を前方に流して逃げた。
向こうではアドレス交換をしてはしゃいでいるトロくんが、全力でさと子ちゃんにアピールをしている。
哀れ、さと子ちゃんは逃げ腰になっていた。
無回答の俺を肯定の返事と捉えたイチゴくんは、「じゃあ御堂は?」と言葉を重ねてくる。
即答した。
誰よりも守りたい人だ、と。
「俺が本当に辛い時に傍にいてくれたのは、彼女なんだ。元カノと別れたあの日、崩れそうだった俺を支えてくれたのは御堂先輩だった。
例の件だってそう。俺達家族のために婚約してくれた。
彼女が拒絶していたら、俺達家族は路頭に迷っていたと思う。俺はあの人を守りたい……、何を差し置いても」
「元カノよりも?」
「一番に守りたいのは彼女だよ」



