前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


   
舞台が終わると、観客席から一般客が撤退していく。

俺達も撤退して外に出るんだけど、この学校であろう生徒達は帰っていく一般客とは違い、体育館前に群がっていた。

何をしているのだろう?

片付けにはまだ早いだろうし。


疑問符を浮かべていた俺達だったけど、すぐその疑問は解消する。


体育館前に演劇部の人達が出ていたんだ。


観客をお見送りしているのだろう。

役の格好のまま皆に手を振っている。

それに群がっているのは女子生徒達。


サインして下さいだの、握手して下さいだの、手紙や差し入れを受け取って下さいだの、すんごい賑わいだ。


しかも一目で誰が人気なのか分かる。


まず主人公の貴族長男が人気だろ。

主人公の男の人の隣では、ヒロインが囲まれているだろう。

更にその隣では俺の婚約者が女子達に囲まれていた。


「御堂先輩! 素敵でした!」

「玲さん、握手してください!」

「私はもう、貴方になら抱かれてもいいです!」


と、まあまあ、人気が凄まじい(抱かれてもいいってそこのアータ。NGワードっすよ!)。
 

俺は何も見なかったことにしてあさっての方向を見る。


相変わらず女子の人気っぷり、凄いな。

折角そこに御堂先輩がいることだし、「観ましたよ」と一言感想を伝えたかったんだけど、あの群れに飛び込む勇気はない。

御堂先輩も一人ひとりの女子に、「ありがとう子猫ちゃん」とか歯の浮く台詞を言っているもんだから、俺は三点リーダーをいつまでも出すしかなかった。

なんであそこにいる女子は子猫ちゃん発言に黄色い悲鳴なんだろう? 理解ができない。
 

「さすが玲お嬢様。とても人気ですね」


さと子ちゃんがぽわっと誇らしげな眼を彼女に向けていた。

そんなさと子ちゃんにトロくんがぽわっとしていたのは内緒だ。


本当に人気が凄いよな。

しみじみ感心していると、「空。行かなくていいのか?」イチゴくんがとんでも発言をした。
 

俺にあの戦場へ飛び込めと仰るのですか? イチゴくん。

ご冗談を!
俺に死ねと言っているのと同じですよ!