前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



かくしてイチゴくんとその連れに幸か不幸かめぐり合ってしまった俺とさと子ちゃんは、成り行きで一緒に舞台を観るはめになった。


所沢くん(以降トロくんと呼ぶことにする。イチゴくんが食い物っぽいあだ名をつけろって言ったから。トロくんには「寿司ネタか!」ってツッコまれたけど)は、さと子ちゃんと一緒に過ごせて嬉しそうだったけど、さと子ちゃんはびくびくと体を震わせて俺の背後に隠れちゃった。


「さーと子ちゃん」トロくんが名を呼ぶ度に、「空さま」さと子ちゃんが俺の名前を呼んで救済の手を求めてくる。

「なんでそいつなん! 呼んだのはオレやんか!」

トロくんが猛抗議。
さと子ちゃんはますます俺の背後に隠れる。


……、ある意味悪循環に陥っていた。


ちなみにようやく館内に入って席に着くことができた俺達は前方中央部を陣取っていた。

左から順にさと子ちゃん、俺、イチゴくん、トロくんとパイプ椅子に腰掛けている。

あんな騒動を起こしても良い席を取ることができたのだからラッキーだと思うよ。


はてさて公演時間までパンフレットを捲りつつ、談笑したりして時間を過ごしたいところなんだけど。


「なんでさと子ちゃん、オレの隣拒むん? 照れ屋さんやなぁ」


てへっとデレるトロくんに、さと子ちゃんがぎゅーっと俺にしがみついて盾にしてくる。
 
これじゃあ談笑もクソもあったもんじゃ無い。

ゴーイングマイウェイマイペースなイチゴくんは気にすることなくパンフレットを読んでいるけど。

「スパイシーなアタックしてくれたやん」

もっと親しくなろうや、トロくんのアピールもさと子ちゃんには胸には響いていないらしい。

パンフレットガードで顔を隠してしまう。

トロくんが空気を読んでくれたら少しは考慮ある行動を取ってくれるんだろうけど、遺憾なことに彼は積極的に声を掛けていた。

さと子ちゃんを照れ屋さん思えるトロくんの頭は幸せなのかもしれない。



と、イチゴくんが俺を肘で小突いてパンフレットを指差した。
 


「お前の婚約者、王女役なんだな」

「あ。そうなんだよ。準ヒロインポジションを貰っているみたい」
 
  

俺達の会話に、「まーだゆうとるんか?」婚約者話をちっとも信じていないトロくんがそうやって口裏を合わせなくてもネタは上がっていると大袈裟に肩を竦めた。


ムッとするイチゴくんは嘘じゃねえっつーの、と鼻を鳴らした。

さと子ちゃんも、一抹の勇気を持ったのか「玲お嬢様と空さまは婚約していますよ」と意見する。

「さと子ちゃんまで」

君まで口裏を合わせられたオレの立場、悲しいやんか! トロくんがショックを受けた表情を作る。