前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



ルンルンの連れにげんなりしているあの学生。

うん、俺は知っている。
あいつは俺の元隣人さんだ。

本名は花畑、あだ名はイチゴくん。

前にバッティングセンターで会ったんだけど、まさか此処でお会いするとは。

挨拶したいけど、俺も連れがいるし、何よりイチゴくんの連れが濃いそう。

お互いのためにここは見なかったことに「アーッ!」
 
 
「そこにいるのは空だろ! 空、そーら!」
 

……、そうか、スルーはできないか。

良かった!
居た堪れない空気から抜け出すことが出来る!

駆けてくるイチゴくんから、俺はぎこちなく視線を逸らした。


ごめん、イチゴくん。
俺は素直に喜べないよ。

お連れの人のせいで君達の周りが寒々していたんだもの!

できることなら他人の振りをしたかった!


「お前も来ていたんだ」


俺達の前で立ち止まるイチゴくんに、俺は引き攣り笑いで「何してるの?」と挨拶代わりにクエッション。

するとイチゴくんがあいつに誘われて此処に来たのだと背後を指差して鼻を鳴らした。
 

「すっごい経験できるかもしれないからってメールくれてさ。
来てみたら、ははっ、女子校でこのザマだよ。女子校でナンパとかナニ考えてるんだ? …っと、そっちはお前の連れか?」

「うん、友達。今日やる舞台に俺の婚約者が出るから一緒に観ようって」


「桧森さと子と申します」ぺこっと頭を下げるさと子ちゃんに、「よろしこ」イチゴって呼んでくれと軽い挨拶をする。


それでー…、あー…、あの人は。
 

「花畑ー! なにしとんねん。はよ女の子を…、なんや知り合いか? ゲッ、しかもリア充かいな。萎えるわ」
 

初対面の相手に向かってウゲッと顔を顰める彼のお名前は所沢 緑(ところざわ みどり)くん。

イチゴくんと同じ学校に通っているクラスメートだそうな。

関西弁を使うからして出身は関西だと推測できる。


「リア充はさいならや」とか言ってくる所沢くんに、「俺の友達だぞ」しかもお前に話した例のスゲーッ男なのだと意味深なことを吐いた。

気だるい返事をする所沢くんは、あれか? とポリポリ頬を掻いた。