向こうまでくっきりと見えるよう磨かれたガラスの自動扉を潜れば、赤絨毯が受付やエレベーター、階段にのびている。
ワックスで磨かれた床のせいで照明の反射が強い。
よくよく目を凝らすと、自分の姿が床に映ってらぁ。
どんだけ磨かれてるんだ? この床。
キョロキョロと見渡す俺と川島先輩は完全に田舎者だったけど、しゃーない。
こんなすっげぇところに来たことないんだもん。
マジすっごいなぁ、高級ホテルそのものって感じ。
照明は全部シャンデリアで飾られてるしな。向こうには高そうな絵画がずらり。
花の絵に海の絵、それから人なんだかよく分からない抽象画が確認できた。
俺と川島先輩の受付は鈴理先輩達が済ませてくれた。
彼女達から出席者の証である花のブローチを受け取って胸に付ける。
その際、鈴理先輩に腰をお触りされたんだけど、無視することにした。大袈裟に反応しても喜ばれるだけだ。喜ばれるだけなんだぞ。
「拒絶がないということは、今宵の営みはOKということか。楽しみだな」
なーんて耳打ちされるまで、俺はセクハラに堪えていた。
ホンット両想いになってから…、やることなすことぜーんぶが過激になってますっす。鈴理先輩。
「そういえば鈴理。君の彼氏はパーティーに出席しないのか? 後日紹介してくれるとは言ったが、パーティーには来るのだろう?」
御堂先輩が話題を振ってきた。
ギクリと陰で体を震わせる俺を余所に(良かった。まだ関係を疑われてはいないようだ)、「ああ。出席するぞ」なんてチクショウな返答を鈴理先輩はしてしまう。
そこは欠席って言って下さいよっ、なんか気まずいじゃないっすか。
「エントランスホールで待つのか?」
だったら僕も待つぞ、挨拶したいしな、とニヒルに笑う御堂先輩。
嗚呼、彼氏をコテンパンのフライパンにしたいんだな。
うううっ、ばらすことを考えると胃がイデデデデデッ。ギッリギリしてきた。
か、神様っ、俺…、貧乏だけど悪いことはしてないっすよねっ。
悪い子じゃないっすよねっ。
何もしてないっすよね。良い子っすよね!
そう思ってくれるなら、ご加護をっ、俺にご加護を下さいっすぅううう!



