回避できないようなら、それだけの策を取るしかない。
楓の言葉に真衣は憂いを抱いた。
「それだけと言いますと?」
真衣の不安と疑念に、
「僕は大雅と鈴理ちゃんが可愛いんだ」
そして豊福くんって子をよく知らない、つまりそういうことだと楓は険しい面持ちで答える。
「そんな…」
それではあの子のしていることは。
言葉を失ってしまう真衣に対し、「これは極論だよ」ネガティブな方に考えないで欲しいと楓は力なく笑った。
「これだから保守的な財閥界は嫌いなんだ。
露骨に誰かの心を傷付けてまで、上へ上へ伸し上がる。誰かの幸せを砕いてまで存続の道を歩む。
そんなやり方、間違っているに決まっているじゃないか。昔はそれでよかったかもしれない。
だけど、今の時代はそれで済まされない。これからは共栄の時代なんだ」
「楓さま……」
「若人だからって屈していたら終わりだよ。
真衣ちゃん、僕は胸に誓っているんだ。財閥の固執を打ち砕いて、新しい風を吹かせるって。多くの敵を作ったとしても、僕はこの信念を譲る気はない。
……何より僕達のためだ。ご老人なんてあと僅かな人生だしね」
早く引退して余生を楽しんでもらいたいよ、大袈裟に肩を竦める楓はからになったカクテル・グラスを見つめた。
「マティーニ。通称カクテルの王様。
マティーニを制す者は、すべてのカクテルを制す。
だったら僕はマティーニになるよ。いつか必ず他のカクテル達を制してやるさ」
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