前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


もはや手遅れだ。仕置きは逃れられない。

内心大号泣。表向き愛想笑いの俺に、しごくご機嫌の鈴理先輩はどんな仕置きをしようかなぁ、悪魔はニタリニタリと笑みを浮かべている。
 

泣きたい、嗚呼とつても泣きたい、俺はどうしてこう…、鈴理先輩に振り回される運命なのだろう。


貞操の危機が訪れないことだけを願うよ。マジで。
 

小さな溜息をついて身を小さくする俺に同情の眼が二つ、三つ、飛んできた。

同情するなら助けて下さいよ、先輩方。

興味津々に俺を見てくる御堂先輩はいるしさ。



…ん? 御堂先輩が俺を見ている?


顔を上げて彼女と視線を合わせる。
ジーッと相手に見られるもんだから、なんだか居心地が悪い。

もしかして関係を疑われた? 思った直後、御堂先輩は神妙な顔を作り、一言。

 
「安心しろ、君の趣向は誰にも公言しないから」
 
「~~~っ、いらないフォローどーもっす!」
 
 
先輩の優しさが超心を抉ったっすっ!

俺の絶叫によって車内が笑声に包まれた。



閑話休題、阿呆な会話をしている間にも車は一旦俺の家に寄ってもらって荷物を置いた後、いざ会場へ。

先輩達と財閥交流会に赴いたんだけど…。 


「やばくない? このホテル」

「想像以上っすね、川島先輩」


スンゲェ高そうなホテルを前にした川島先輩と俺は、「……」「……」見事に言葉を失っていた。

 
なにこの高層ビル。

見上げてもてっぺんがギリ見える見えないか、ははっ、嘘だろおい。
高層ビルなんて畜生だぞ。高い所なんて大嫌いなんだからな。

だけど、すっげぇな。

エントランスからして豪華だもん。

まず自動扉の枠が煌びやかなこと、煌びやかなこと。金枠かよ、あ、よくみりゃ彫刻されてらぁ。マジかよ、あの枠だけにどんだけ費用掛けてるんだよ。