というか絶対に噛み締めている。


あたしが食えなかったのだから今頃、玲も逃げられて悔しい思いを噛み締めているに違いない。

同棲しているから尚のこと辛いかもな(というか同棲だと? あたしでさえ泊まり程度なのにぃいい!)。


「せいぜい食えない悔しさを味わっているがいい。玲。簡単に空を食えると思うな」
  

若干、嫌味と羨望を含めた高笑いを上げる鈴理の傍で、

「さてと休憩は終わりだ」

企業分析の続きをしようと大雅が財務諸表に目を通し始めた。

関わるだけ阿呆を見ると大雅は判断したようだ。




ちなみに、話題の中心になっている婚約カップルだが。
 
 
 
「う゛うっ…、先輩。頭痛いっす」

「ちょっと待ってろ。今、蘭子に連絡して氷枕を作ってもらうよう言ったから。湿布も用意するべきか?」  



布団の中で唸っている婚約者は大丈夫だと返すが、もう勉強は無理そうだと嘆いて撃沈している。

冷蔵庫にあったペットボトルで患部を冷やしてやりながら玲は溜息をついた。

まさか迫った直後に手を振り払われ、椅子から彼が転げ落ちてしまうなんて。


しかも壁に後頭部をぶつけ、更に持っていた分厚い参考書が彼の顔面を直撃。

ムードもへったくれもなくなった。
 

(はぁああっ、また逃げられるとは。豊福、君って男はどれだけガードが堅いんだい?)
 

キスはできているのに、それ以上ができないなんて。自分達は婚約者なのに。
 

「一ヵ月半後まではお預けか?」


深い溜息を零しつつ、玲は明日も迫ってみようと性懲りもなく決意するのだった。


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