「セックスのことを述べたが、やはり悔いるものだ。嗚呼、空のお初はあたしだと決まっているのに! もしも……、もしも玲がガオーッなんてことをして童貞を奪ったら!
ぬぬぬっ、初々しいチェリーボーイを食らうのがあたしの楽しみだったのに!
何もかもが初めてな空を翻弄させる。それがあたしの狙いだったのにぃいいい!
折角ケータイ小説で色々勉強していたというのに!」
「(えげつねぇよ馬鹿!)なあ、鈴理。てめぇ、女子やめたら? 言っていることがまんま男だぜ?」
「……はぁああ、想像するだけで切ないな。大雅は童貞だったか? 一ヵ月半後のことを考えて一応、大雅版の受け男のシナリオを考えているんだが」
「ウゲッ! テメェ俺に近寄るんじゃねえ! そんなきめぇシナリオをこのクソ忙しい中、考えていたのかよ! あと残念でした。俺は童貞じゃねーよ」
ドン引いている大雅に、
「万が一を考えておくべきだろ?」
もしも勝負に負けたら、いや負けるつもりは毛頭もないのだが、もしものことが遭ったら自分は婚約者を受け男にすると約束しているのだ。
お披露目として、恥ずかしくない受け男にするべきだろうと鈴理は鼻を鳴らす。
受け男にする自体が恥ずかしい行為だと大雅にツッコミを頂いたが、鈴理は見事にスルー。
「そうか。童貞ではないか」
なら攻め男が受け男に落ちるまでのプロットを組んでおかないといけないな、と溜息をついた。
「空のような草食男子が好みなのだが、大雅も中身は草食だしな。まずは恥じらいを教えるべきか」
「~~~ッ、俺は草食じゃねえっつーの! 草食が童貞捨ててるかよ! ったく、豊福と勝利だけ考えておけって。俺はぜってぇ受け男にゃならん」
ま、勝っても豊福のお初は諦めるべきかもしれねぇけどな。
意地の悪いことを大雅に言われてしまうが、鈴理は動じず、腕を組んで「それだけの力量があればの話だがな」と目を伏せた。
「どういう意味だ?」大雅の問い掛けに、「以前も言ったが」空はエスケープの天才なんだ、鈴理は鼻を鳴らす。
「あいつのポリシーはノットスチューデントセックス。現実をシビアに捉えているから、安易なセックスは認めていないんだ。
ほら、あいつって金銭面にはとても細かく厳しいだろ?」
「あの歳で水道光熱費や電気代を気にする奴だからな」
「シビアを換言すると女の体を気遣っているともいえるのだが…、とにかく空のセックスに対する厳しさは生半可なものではない。
若気の至りなど言語道断にする奴だ。
キスまでは受け入れてくれても、セックスは絶対に許してくれない。流されそうになっても最後は理性が勝る。
それで何度あたしは悔しい思いをしたか。今頃、玲も悔しい思いを噛み締めているかもな」