「豊福」
部屋の向こうにいる彼に微笑む。
弾かれたように分厚い参考書から目を放し、此方を向いておかえりなさいと頬を崩す婚約者。障子を閉めて玲は彼に告げる。
「物足りないのは僕の方だったみたいだ。我慢しようと思ったが無理そうだ」
部屋を出る前の話題を引き出し、君が勉強しているとか構っている余裕なんてなさそうだと玲は笑みを深める。
「月が出ているせいかな」
知っているかい?
月の人の欲を駆り立てるらしいぞ。
口角をつり上げる玲に、「え」何を言って……、一変して顔を強張らせる彼は本能的危機を察知したらしい。
椅子からやや腰を浮かせ、
「やだなぁ。寝ぼけちゃって。ほら寝るっす。まだ朝まで長いっすよ」
と、しどろもどろになっている。
「そうだな。夜は長い。だからこそ二人だけの時間が共有できるだろ?」
彼に詰め寄ると、一層向こうが焦りを垣間見せた。
「俺っ、勉強があるっす」
だからそんなお戯れはちょっと!
この続きはWEBでしましょうね!
あれ、WEBってなんでしたっけ? あれあれあれー?
すっとぼけながら完全に逃げ腰になっている彼。
その腕を掴み、「物足りない」我慢もできない。勉強なんて知らないと距離を詰めていく。
「勉強なら僕と、男女の勉強をしてみないかい?」
「え゛? いやぁあ、それってもしかしてもしかしなくとも教科的に言えば保健じゃないっすか? ……俺、中国語をしたいんですけど」
「だったら中国語で僕が口説いてあげる。その体で教え込めばいi「全力で遠慮させてください!」
どうして? 婚約者なのだからそれくらい許されるだろ?
逃がさないよう彼を抱きこむために手を伸ばす。
雰囲気は完全に玲が掴んでいたが、「ちょ。ちょっと待って下さい!」焦りに焦った空が掴まれている手を振り払ったその瞬間―――…。



