王子になると決めているからこそ、玲はいても立ってもいられず半身を折って起き上がった。
わざとらしく目を擦って欠伸を噛み締める自分に気付いた彼は、
「起こしちゃいましたか?」
と声を掛ける。
首を横に振り、手洗いに行きたいのだと告げた。
「てっきり起こしたかと思っちゃいましたよ」
彼は何処となくホッとした笑みを浮かべて足元には気を付けて下さいね、と注意を促してくる。
うんっと頷く玲は彼に程ほどにしておけよ、と言葉を掛けて立ち上がった。
次いで彼に歩むと、「充電してあげる」耳の裏にキスをした。
「イ゛ッ」
シャーペンを落とす彼が何をするのだと顧みた隙を突いて唇を食む。
瞠目して固まってしまう彼に笑い、浴衣の袂に手を突っ込んで、「豊福のヘソは何処かな」とセクハラせくはら。
悲鳴を上げそうになった彼はどうにか声を押し殺して、「エッチっす!」自分の手を袂から引っこ抜く。
「な、なんてことするんっすか! 寝起きがてらにセクハラなんて!」
「触って欲しそうだったぞ? 豊福は素直じゃないから態度で示してくる。リフレッシュと充電の両方ができただろ?」
「だぁあれが態度で示しましたか! 一連の流れの何処をどう解釈すれば『先輩。俺に触れてください。キャピ』と訳すことができたんっす?!」
「ふふっ。素直じゃないな豊福。だったら素直にしてあげる」
可愛い子猫ちゃんには子猫ちゃんらしい鳴き方を教えてあげるから。
後ろから婚約者を抱きこんで再び耳の裏にキスをする。
向こうの焦る声が聞こえるが無視してうなじに唇を落とした。
すると悪戯はやめて下さい、と彼が自分の行為を振り払うように顧みた。
そうなると分かっていたから重ねたい唇に自分の唇を重ねてその言葉と動きを封じる。
瞳孔が大きくなる彼の眼に笑い、上唇と下唇を丹念に舐めあげて「ごちそうさま」
もっと深いキスを送ってやりたいが、そうすると此方が我慢できそうにないからなとウィンクして彼を解放する。
頭から湯気を出している真っ赤っかの婚約者に、「実は物足りない?」と意地悪いことを聞いてみるとブンブンと彼はかぶりを横に振ってもう充分だと小声で答えた。
「隠さなくてもいいんだが? 豊福」
いつもはもっと濃厚なものをあげているから物足りないんじゃないのか?
意地の悪い言葉を重ねると「酷いっす!」これは明らかないじめだと彼から抗議の声を頂戴してしまう。
いじめ、一理ある。
可愛い子ほどいじめたくなるものなのだから。



