前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「必ず逃げられてしまう。決まって惜しいところで」


彼の逃げ足の速さは天性の才能なのではないだろうか。

襲おうかなっと思うと、彼は決まって距離を取るし。

強引に押し倒せば、邪魔立てというイベント発生。


言葉攻めのキス攻めにしてノリノリにさせようにも、必ず彼の理性が勝って逃げられる。


ああ逃げられたとも。

この前も首筋にヤラシーくらい痕をつけ、さあイタダキマスをしようか、と乗り気だったのにも関わらず、「おやすみなさいっすよ」と言って空気を打ち壊したという。


あの時の心境はまさしく、「え。ナニ言っているんだい豊福」だったさ。 


ええい、女がえろくないとでも思っているのかい?!


期待していないとでも?!
健全にオネムなんて一抹もなかったのに?! 

それともこれは挑発だと受け取っても?!

腹が立って無理やり前進しようとしたら蘭子がやって来て、「そろそろおやすみ下さい」と挨拶される始末。


蘭子自身、自分達が睦まじい行為をしていると知らずに挨拶に来たものだから、部屋の光景に目を点。

次いで、「程ほどにおやすみしてくださいね」と言って障子を閉めてしまったが遺憾なことに興ざめしてしまったという。

軍配は彼に挙がったのだ。


「ふーっ……、あの猛獣鈴理と健全を保っていただけはある。恐るべし豊福。ガードが堅すぎる」


確かに彼は鈴理のことをまだ想っている節がある。

その気持ちを考慮して遠慮はしているが、自分だって攻め女。

攻めたい女なのである。


だからもっと深い関係になりたいのだが。


むむっと眉根を寄せる玲は、そろそろーっと相手の袂に手を伸ばす。

すると何かを察したように寝返りを打って背を向けてしまった。

まさかのガードか?
本能的ガードなのか?

この伸ばした手、手、手はどうすればいいのだ?

ノットスチューデントセックスを掲げている硬派な彼に玲は溜息をつきたくなった。

もう少し男子高校生らしい思考を持ってくれないだろうか。


いや、初々しいところがチャームポイントではあるのだが。
 

悪戯をしてやりたい気持ちが芽生えるものの、玲は彼氏の顔色を窺って苦笑を零す。

明かりを落とすと彼の隣に寝転がり、布団を掛けてぬくもりを共有した。


せめて今はゆっくり休んで欲しい。

さと子も心配していたが、最近の彼は根詰めすぎている。