前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「さと子。僕達は部屋に戻るが……、どうした? 顔が赤いぞ」

「はひっ! なんでもないでございません!」

「言葉遣い……が」

「あ! な、な、なんでもないですよ。ほんとうに」


どうぞごゆっくりお休みになってください!

ぺこぺこと頭を下げるさと子に玲は疑問符を頭上に浮かべているようだったが、あまり気にすることがなかったのか、


「じゃあ失礼するよ」


君もゆっくり休むんだよとウィンクして自室に戻って行く。

正しくは空の自室に戻って行く。


ぽけーっと婚約者カップルを見送ったさと子は、「空さまとお嬢様は」立場が男女逆転なんですよねぇ、と独り言を漏らす。


だったらもし、もしも、自分の想い人と自分が逆転になってしまったら!


(わ、わわわ私が七瀬さんを押し倒してしまうんでしょうか! いや、そんなっ、私なんかが押し倒してしまうなんて。
でもちょっとありな気もしてきてっ…、だってリード権が私にあるってことは、その、私の好きなことをごにょごにょ)
 

「おや、さと子。此処でナニをしているんだい?」


噂をすればなんとやらである。

片恋相手が出現し、さと子は内心で悲鳴を上げた。


今日も相変わらずの優男で男前でカッコイイです、七瀬さん!


真っ赤に顔を染め上げるさと子は、「やっぱり無理です」私にはそんな激しい攻めっ、やってみたいけどそんな、そんな、そんなっ!

彼は五つも年上なのだから、そんなことできる筈もない!


ちょっとやってみたいけれど、いや無理! ゼッタイに無理!
 

着物の袖を握り、さと子は暴走していた。

傍らでは当然のように七瀬が困惑して彼女を見つめていたという。