ぶすくれる玲の傍らでさと子が想像してしまう。SMプレイとやらを。
つい赤面してあたふたとなってしまったのは、想像したカップルが自分の友達だからだろうか。
ブンブンとかぶりを振って妄想を散らしていると、ずるっと柱を擦(す)るような音が聞こえた。
視線を流せば柱から滑り、玲の肩に頭を預けている婚約者の姿が。
「まったく起きないな」
こんなにも傍で会話しているのに、玲が婚約者の頭に手を置いて微笑を浮かべる。
「毎日二、三時間睡眠なんだ。蓄積された疲労が爆ぜてもおかしくない。……無理をするなと言っても聞きやしない。困った姫様だ」
「どうしてそこまでご無理を?」
召使の立場にいるさと子では、彼等の間に渦巻いている家庭事情を知る術はない。
それでも無理をしている理由を尋ねてしまうのは、二人を“友達”と思っているからだろう。
「僕と見合うことで守れる立場になれると、思っているのかもしれないな」
豊福は優しいから。
苦笑を零す玲の口から出た言葉が真実そのものでないことくらい、さと子も容易に察した。
けれどもそれ以上は聞かずに置く。
相手側が触れて欲しくなさそうな面持ちを作っていたから。
「冷えてきたな」
そろそろ部屋に入った方が良いかもしれない、玲が夜風に身を震わせる。
「そうですね。では空さまを起こしましょうか」
さと子がそう言った刹那、玲が何か言ったかとばかりに首を傾げて立ち上がった。
「あ、いえ。なんでもないです」
婚約者様を横抱きにするんですか、そうなんですか、そういうものなんですか。
未だに男女逆転ポジションに慣れないさと子は、軽々と婚約者を横抱きにして自室に戻ろうとしている玲に遠目を作っていた。
おかしい、普通は女性が男性に横抱きされるものではないのだろうか。
力持ちな玲にも驚くが、それを上回る異様な光景がさと子を途方に暮れさせる。
いやしかし、である。
彼等の睦まじい光景を目にした時は、完全に玲が空を押せ押せ攻め攻め食っちまうぜアクセル全快だった。
だって七瀬さんと部屋に入ったら、浴衣を肌蹴させているお嬢様と赤面している婚約者様がっ、あああっ、なんだろう。この禁断の扉を開けてしまった感は!



