ズズッと冷えた緑茶で喉を潤し、俺はさと子ちゃんから夜空に視線を移す。
「あと一ヵ月半か。早いなぁ」
「え?」声を上げるさと子ちゃんに、「なんでもないよ」俺は誤魔化し笑いを浮かべた。
勉強に追われる毎日だけれど、密かに俺はカレンダーの日数を数えている。
残り一ヵ月半。
一ヵ月半で鈴理先輩と御堂先輩の勝負が決まる。
鈴理先輩は大雅先輩と破局すると宣言し、御堂先輩はそれができるかどうか見守ってやると断言している。
できなければ大雅先輩は可哀想な事に受け男にされ、抱かれるとか。
俺は俺で……、怖いから想像しないようにしよう。
早く三ヶ月経って欲しいような、経って欲しくないような、中途半端な気持ちが俺を複雑にさせる。
どうあっても借金を消せるわけが無い。
それは分かっている。
どうあってもあの二人が婚約を白紙に出来るわけが無い。
それも分かっている。
どうあっても鈴理先輩の負けは目に見えている。
分かりきっている。
なのに、簡単には割り切れない、この気持ち。
俺は乙女か!
いや乙男(オツオトコ)か……、女々しいねぇ俺も。
さっさと現実を受け入れたら良いのに。
モロッコに行って娘にでもなっちまうか?
ったくもう、女々しい自分に苛立ちを覚えるよ。
(今日は特に女々しいな。これも鈴理先輩のせいだよな。どうして俺の傍にいたんだろ、あの人)
俺達はどうあったって傍にいられないって分かっているくせに。
諦めの悪さはぴか一だよな。
ほんっと自分の思うとおりにならないと嫌がるあたし様だよ。
前みたいに高飛車口調に戻って、俺を困らせて、振り回して。これから先、彼女と先輩後輩関係でもその関係は続いていくんだろうか?
近未来すら俺には想像しかねた。
重たい瞼を懸命に持ち上げたまま、俺は夜空にぽっかり浮かぶ満月を見つめ続ける。
今日の満月は本当に綺麗だ。
ほんとうに、きれい―――…。



