前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



これが俗に言うアイシテイルという気持ちの表れだと思うのだが。

誇らしげに笑う御堂先輩の隣で俺は大感激のあまりに彼女に抱きつく…、わけもなく、隣でシクシクと涙を流していた。

彼女も鈴理先輩もなーんで人のことを監視…、じゃね、過度に見守ろうとしてくれるんっすか。

この部屋の何処に隠しカメラがセッティングされてるんっすか?


……俺、泣けてきたじゃないっすか。


間違っても感涙じゃないっすよ。

まじっすよ。
ほんとっすよ。
冗談じゃないっすよ。
  

なによりこの痕をSM後の証だと思ってくれていたことに大ショックっす。

俺はMじゃないっす。
ロッテンマイヤーさんは若干Sッ気があったけど。
 

どーんと落ち込む俺にふと御堂先輩は真顔になって、「いいかい豊福」些少のことでも何か問題があれば相談するんだ、と告げてきた。


「ただでさえ過密スケジュールなんだ」


これ以上の負担を君には負って欲しくない、何かあれば絶対に相談だぞ。プリンセスはこうのたまった。


うーん、そうは言ってもロッテンマイヤーさんの言うことを一理あるんだよな。
 

俺、なんちゃって財閥子息候補になっちゃっているから、それなりのスキルは身に付けておかないといけない。覚えることもいっぱいだ。


でもちゃんと覚えられていない俺がいるわけで。

言葉遣いも正しく使えていないし。


なるべく目上の人には正しい日本語を使っているとは思っているんだけど、無意識の内に『―っす』って使うこともちょいちょい。マナーもちっともだ。

ううっ、フランス語や中国などなどの外国語は全然喋れないし。

英語は読み書き程度で会話レベルまで達していないし。

まだまだ婚約者としては半人前だよな。


「出来が悪いんっすかね。俺」
 

溜息をついて落ち込むと、「馬鹿だな」君はこんなにも努力しているじゃないか、御堂先輩が背中を軽く叩いて励ましてくれる。

「焦らなくいいさ」

自分のペースで勉学に励んで欲しいと一笑を向けられ、俺は力なく笑みを返す。


ロッテンマイヤーさんの言うとおり、御堂先輩は俺に甘いよな。

ほんとはこんなんじゃダメだってこと、分かっているだろうに。
 

「さあ豊福。夕飯にしよう。僕もまだ食べていないんだ」

「え、先輩。食べていないんっすか?」

「君と一緒に食べようと思ってな。豊福が努力している間、能天気に食事なんてできないだろ?」
 

笑顔を向けてくれる御堂先輩は、やっぱり俺に甘い人だと思えて仕方がない。

さり気ない優しさでさえ角砂糖のように甘いものだと思ってしまうのは、彼女の想ってくれる気持ちが原因だろう。

その甘さが俺には活力となり、強い支えになっていることを彼女は知ってくれているだろうか。