ロッテンマイヤーさんは何か言いたげだったけど、有無言わせずさっさと博紀さんが案内してしまった。
え。この展開はまさかのハイジ、最終回的な感じ?
まだクララが立ったという名シーンどころか、俺、夢遊病にすらなっていないんだけど。
場面的に言えば、これからアルプスの山に帰って、おじいさんと感動的な再会をしなきゃいけないのに。
ぽかーんと見送った俺を余所に、「まったく」誰の許可を得てSMをしているんだい、御堂先輩が不機嫌に唸って俺の腕を取った。
赤筋だらけの腕を眺めつつ、いくら教育だからとはいえ、これは頂けないと婚約者は鼻を鳴らしている。
んでもって俺にもなんで相談しなかったとお叱りを飛ばしてきた。
いや、そう言われても、あれがあの人のやり方だって割り切っていたしか言いようが。
「君のことだ。迷惑を掛けまいと僕を想ってのことだろう。
そういう健気さは可愛いが、こういう問題は言わなければいけない。分かるね? 君は一人の体じゃないんだ」
あっれー、健気に想…、ていたとか、そういう問題じゃないよーなー。
単に俺、この先生のやり方は旧式だなって思っていただけで。
それを我慢していただけで。
そこまで大層なことを思っていたわけじゃ。
しかも一人の体じゃないって、それ、あの……、なんか違う! その台詞間違ってる! 受け身であろうと、決して男の俺に向ける言葉じゃないぃぃいいい?!
な、何してるのこの人!
突拍子もなく腕に口付けした御堂先輩に、俺は赤面して大慌てで腕を引いた。
「せ、先輩…! な、なにするんですか!」
「豊福。僕はな、ここ数日とても我慢していたんだ。
あの家庭教師の勉強後、君の腕は必ず赤筋だらけで…っ、気になって隠しカメラで確認してみれば、あ、あの女が君を叩いて楽しんでいるではないか!
幾ら女性好きの僕でもあの光景には大ショックだったぞ!
なんてこったいっ、あの女はそういう趣味だったのか!」
「おぉおお俺も大ショックっす! 隠しカメラってうえぇえ?! しかもそういう風に捉えられていたなんて!」
「若い女と君を二人だけにするわけないだろう。三十路過ぎではあったが、歳の差恋愛としては許容範囲だろうし。なにより豊福は可愛いからな。僕はいつでも何処でもどんな時でも君を見守る義務がある」



