前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「いいんだぞ豊福」


君はいつもどおりに呼んでくれたら、満面の笑みを浮かべる御堂先輩は今日はもうお開きにしましょう。彼も疲れていると言って、笑みを深めた。


「貴方は本当にこの子に甘いですね。御堂令嬢」


俺を助けるために現れたのだと容易に察したロッテンマイヤーさんが、呆れ顔で視線を婚約者に向ける。

「甘くて当然です。僕は彼の婚約者なのですから」

目を細めて笑う御堂先輩は、ご熱心なのは嬉しいのだけれど過度な教育は困ると言った。

ましてや傷物にされては敵わない。
彼女は一変して不機嫌になる。


「彼は豊福家から預かった大事な子息です。そして僕の婚約者です。それを忘れないでもらいたいものです」


祖父も彼を傷物にされるのは困るでしょうし、僕や僕の両親は彼の家族に責任を持って預かると言った身。

傷を付けることは彼の家族に対する裏切りと同じなのです。

何が言いたいか分かりますね?
貴方ごときの行為でそれを破られては困るのです。
 

あまり酷いようなら容赦なく替えます。

教育者の代替なんて幾らでもいますから。


祖父が貴方を雇っている? そんなこと僕は存じ上げません。

どの世界でも結果を出してこそのプロ。

此方が貴方に対してお金を支払っている以上、貴方は教育のプロなのです。

どうも教育過程が酷なようですが、僕の認識がおかしいのでしょうか?

それで結果が出せるとでも?


だったら楽しみですね、彼がどういう結果を出してくれるのか。


豊福が成長できず、寧ろ倒れてしまいそうなほどの教育を受けてしまっているのならば、結果は謂わずもですけれど。
 

どのような環境に置かされ、その生徒がどういう環境でどれほどのレベルかも把握できず、彼の才能を伸ばすどころか妨げになる家庭教師だとしたらそれは不要ですよ。

ビジネス界でいえば損失です。
祖父は損失を嫌うタチですので、これを聞けばどうなることやら。
 
僕の両親も蘭子という僕の教育係を通して一報を聞いているようです。

どうも僕と両親の気は合っているみたいでして、貴方の教育に疑念を持っているみたいですが……、如何でしょうか?
 

「お話はそういったところですかね。
本日もありがとうございました。僕のだいっじな婚約者に教育をしてくださいまして。
蘭子、博紀、そこにいるか? 小泉先生がお帰りだ。見送ってやれ」


痛烈な言葉を羅列した御堂先輩は、ちょっち青褪めているロッテンマイヤーさんにまた来週“お会いできたら”お会いしましょうと皮肉を浴びせ、召使さん達に玄関までの案内を頼む。