前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「申し訳ないです」

渋々と謝罪を口にするしかないんだけど、俺が悪いのかこれ!

まだ家庭教師をはじめて二、三週間なのに此処まで言われなきゃなんないのか?!


ええい、実力に差があるのはしゃーないっしょ!

俺、塾も何も習っていなかったわけだしさ!

なんかものすっげぇ俺ってカワイソー!
んでもって逆上しない俺、すっげぇぞ!

此処までぼろくそに言われたら反論の一つでもぶつけてやるレベルなのに!
 

段々と腹が立ってきた俺の心情など露一つ知らないロッテンマイヤーさんは、「課題は多めに出しておくわ」と極刑を言い渡してきた。


う、嘘だろ。

普段だって課題が多いのにっ、つい泣き言を漏らしてしまう俺に指し棒が構えられたのはこの直後。


掛けている眼鏡のレンズが煌いているもんだから余計に恐怖心が煽られた。
 

項垂れて感謝の言葉を口にする俺に(課題を出されたらお礼を言え。それが彼女の教えだ)、満足げな顔をしてロッテンマイヤーさんはいつもの五倍課題を出してきた。

絶句どころじゃない。
途方に暮れてしまう。

どーしよう、土日も眠れないレベルなんだけど。


俺、別の科目も課題があるのに。

学校の勉強もあるのに。


それでもこなさいといけないのは分かっているから、やっぱり俺には感謝の言葉しか言えない。

反論とか無理だって。
この人、逆ギレしそうだし。
 

泣きたいような、匙を投げたいような気持ちに駆られていると、


「そろそろ豊福を僕に返してくれませんか?」


前触れもなしに障子が開かれた。
 
王子系プリンセス御堂先輩のご登場だ。

柔らかな短髪を軽く揺らしている俺の婚約者は珍しくも女性相手に意味深な笑みを浮かべ、障子の枠に背を預けて腕を組んだ。

「御堂先輩」

うっかりと普段から呼んでいる彼女の呼び名を口にしてしまい、ロッテンマイヤーさんから咳払いをされる。

身を小さくしつつ、「御堂令嬢」俺は言いなおした。