前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



だから俺は鈴理先輩達のことを令嬢令息と呼ぼうと思っているし、御堂先輩のこともその先生の前じゃ“御堂令嬢”って呼んでいる。

まだ正式な婚約者じゃないから“令嬢”って呼ぶのが正しいんだって。


御堂先輩は「豊福にそう呼ばれても嬉しくないな」って苦笑していたけど、でも呼ばないとあの先生怒るし。
 

くっそー、あの人の目はまんまロッテンマイヤーさんなんだよなぁ!


アーデルハイド、こんなことも分からないのですか?
どうしてこのような礼儀作法も出来ないのです?

アーデルハイド、聞いていますか。


アーデルハイド!


みたいな目で見られるからっ、俺の心境は『うわぁあああアルプスという名の庶民の生活が恋しい! 山に帰りたーい!』だったりする。

気分はなんちゃってハイジだ。

そろそろ山恋しさに夢遊病になってもおかしくない気がする。


父さん母さん、息子はアルプスに帰りたいです。

ヤギ達と戯れたいです。


「ロッテンマイヤーさんに会いたくない。俺、あの人怖いし苦手だ」


ロッテンマイヤーさん改め、フランス語の先生に会いたくないと嘆く俺はグズッと涙ぐんだ。

あの人に会うんだと思うだけでストレスだ。
胃がよじれそう。

でもその人の前で弱音なんて吐いてられないから、此処で愚痴るしかない。


あの人に会いたくないな。


ズーンと落ち込む俺に同情したフライト兄弟が、

「俺。ペーターになってやるぜ」

「じゃあ僕はおじいさんになってあげるから」

と微妙にずれた慰めをかけてくれた。

俺も微妙にずれた感動を覚えて、「クララを紹介するから」と返事した。俺はよっぽど寝不足のようだ。
  
 

その日の授業を終えると、俺は真っ先に正門に向かってお迎えの車に乗り込む。

走行中の車内でフランス語の予習をし、御堂家に帰宅すると十字を切って自室へ。


既に到着しているロッテンマイヤーさんに挨拶して、地獄のお勉強がスタート。


まったく聞きなれない発音を言わされ、文法の出来具合に怒られ、言動を厳しくチェックされ、これまた礼儀作法がなっていないとお叱りの言葉を多々頂き、パソコンのお勉強へとうつる。

苦手も苦手なパソコンと向き合った後、なんとロッテンマイヤーさんが礼儀作法のお勉強させたいからと急遽お勉強内容を増やされて俺は心中で大号泣。