前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



嗚呼、思えば思うほど忙殺されそうな毎日だ。

多忙の『忙』は心を亡くすと書くわけだけどさ、スケジュールをこなしている間はマジ心を失くしている気分。

気付けば英語してたり、数学してたり、ドイツ語をしていたり……だもんな。

その『忙』を殺すと書いて忙殺。
心を失くすどころか、殺される勢いだ。

参ったね、本当に。


「空くん。今日の予定は」


エビくんの問い掛けに俺はなんだっけと脳内スケジュール帳を呼び出す。
 

「確か今日はフランス語と、俺の苦手な情報処理の勉強がある予定」

「情報処理ってパソコンを使うヤツだよな?」


「うん。今の時代、ワードやエクセルが使えて当たり前らしいんだけど、俺、機械音痴だから。エクセルに使う関数は分かるんだ。
SUM関数とかIF関数とか、ただ入力がすこぶる苦手で。

先生からも『関数が分かっているのにねぇ』って苦笑いされてっ…、パソコンは未知な領域だよ。俺、ついていけないや」

 
両指でキーボードを打つブラインドタッチとか全然できないし。

だって俺のタッチは一本指打法。両人差し指でキーを叩くことしかできないんだ。

先生からは、絶対に両指で打つべきだって注意を促してくるんだけど、キーの場所も把握していない野郎が両指でキーを弾くとか至難の業だと思うんだよ。まじで。


フランス語も課題は終われど発音に自信がないから予習しようしようって思ってはいたけど、睡魔に負けてしまうという。
 

今日の家庭教師が怖いな。

特にフランス語の先生とかむっちゃ怖いから、ヘマできないんだよなぁ。

こんなことも分からないんですかって目で見られるのが超堪える。


パソコンの先生は既に俺がどれだけ機械音痴か分かってくれているから、優しく教えてくれるんだけど……、憂鬱だなぁ。
 

しかもフランス語の先生、女の先生なんだけどさ。
 

フランス語だけじゃなく俺に礼儀作法も教えてくれる先生だから気が滅入る。

一々言動をチェックしてくるんだ。


俺の口調が最近畏まっているのもこの人のせい。

『―っす』とか言った日には、指し棒で叩かれる。

いつの時代のスパルタだよってツッコミたいくらい指し棒で容赦なく叩いてくる。