自慢している某財閥の子達に苦笑する俺だけど、ビニール袋に入った戦利品達を覗き込んではついつい笑みを零してしまう。


大漁たいりょう。

68円のトイレットペーパーも買えたし、父さん母さんの喜びそうなカップ麺も買えたし、歯磨き粉も激安だったから補充用に買えたし。

贅沢を言えば、二人の好きなお菓子か何かを買えれば良かったんだけど…、ま、これで充分だろう。
 

ご機嫌にビニール袋を抱えていると、「空」ほら、と鈴理先輩が買ったレトルトカレーを俺に差し出してきた。
 

目を丸くする俺に、「これはアンタのために買ったものだ」受け取れと目尻を下げる。

貴重な体験をさせてもらったお礼でもあるから受け取れ、なーんて言われたもんだから、俺、感動。

なんっすか鈴理先輩、貴方は天使っすか。女神っすか。菩薩っすか。


普段は悪魔なことばっかしてくるのに、ふっ、と人のハートを掻っ攫うような行為しちゃってくれて!
 

好意を素直に受け取った俺はあざーっすと頭を下げ、レトルトカレーを受け取る。これでまた一つ我が家の土産ができたぞ。
 

これに便乗したのが宇津木先輩。

「わたくしはシェフに作ってもらえますので」

と、微妙に嫌味として受け取ることもできるような台詞と一緒に動物さんクッキーを俺にくれた。

こうなると大雅先輩も便乗せずにいられなかったのか、缶詰を投げ寄越してくれる。

べつに無理して俺にくれなくても良かったけど大雅先輩は、

「サンマの煮付けなんて」

いつだって食えるし、と完全なる嫌味を俺に吐いた。

なるほど、んじゃあ有りがたくもらうっす。
 
 

ポイ。

   

いきなり襲い掛かってきた音を擬音語にするとこんな感じ。

俺の抱えているビニール袋の上にスルメの入った袋が放られた。


これが誰のかってそりゃあ…、スルメを買ったのは飛び入り参加したあの人しかいないわけで。


ズイーッと視線を上げれば、真正面に座っている某王子、ん? 王女が足を組んで窓枠に頬杖を付いていた。


えーっと、これは…。