前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「だって鈴理さん。空さまにキャーッ! なことをされていたんですよね。好きな人にキャーなんてああぁあ、空さまにどんな鬼畜なことを!」


「フッ…、真衣姉さん。毎度のことながら言わせないで下さい。
あたしは攻める専門ですよ! あたしが鬼畜なことをするのです。そう、キャー! とさせるのはあたしなのですよ! 女は攻めてナンボですし!」


「まあ鈴理さん。女性は男性に攻められてナンボなのですよ。一見人が良さそうな男性でも、その瞳の奥に滾らせた欲をぶつけられると思うと。
わ、私も是非男性に攻められたいです。耳元で『俺のものになれ』と囁かれた日にはっ、キャッー!」


激しい妄想をした真衣はポッポッと頬を赤らめ、なんてときめくシチュエーションでしょうと暴走している。

「いえいえ」

ときめくシチュエーションは男に耳元で囁いて赤面させることなのだと鈴理。

早く元カレを食ってしまいたい、なんぞとぼやく始末。双方正反対の意見をぶつけていつつも、妄想の内容が内容である。


咲子は妹達の妄想に呆れる他なかった。
 

その内、咲子の部屋に四女の瑠璃もやって来るようになる。

三人で仲良く和気藹々と談笑しているのだと思ったのだろう。

最初こそ部屋に訪問した時は不機嫌も不機嫌、のけ者にされたことを恨んでいた。


が、鈴理が婚約破棄のために仕事をしているのだと知るや邪魔しないよう傍にいて良いかと聞いてきた。こうして四姉妹が集うということが滅多に無かったのだ。

久しい光景に瑠璃は姉達の傍にいたいと申し出た。


邪魔しないことを固く約束させ、鈴理は姉妹達と共に日々を過ごした。


昼間は婚約者と自分達の出来る範囲の分析を、放課後は楓達の手を借り、夜は姉達の助言に耳を傾ける。

限られた時間でやれるだけのことをやる。それは多忙ながらも充実した日々だった。
 

時に心が折れそうになった日もあったが、周囲の優しさが鈴理の心を支えてくれた。
 

両親とは相変わらず隔たりがあり殆ど口をきかない状況だったものの、鈴理が姉妹達と過ごすようになったことに何か思うことがあるらしい。

よく観察されるようになった。

視線を感じつつも、鈴理は姉妹と当たり前のように会話するようになる。


あの頃のように隔たりも評価も気にせず、純粋な気持ちで長女、次女、そして四女と駄弁る。過ごす。笑い合う。


それがこんなに楽しかったものかと、鈴理は思えてならない。