こういうことは大勢でするべきだと楓は綻ぶ。
「しかし」それじゃあ親が納得するかどうか、鈴理の不安に楓は二人だけじゃどうしようもない時があると苦笑を零す。
鈴理たちに限ったことじゃない。
ビジネス界だって一企業で事業を確立し、上場企業として名を挙げていくのは至難の業だ。
ビジネス界は常に競争で渦巻いているが、一方で共存という手もある。
力を合わせて企業を盛り上げていかないと中小企業の場合はやっていけない。
だから手助けは必要なのだ。
より良いものを築き上げるためにも。
「完璧なものして親を納得させればいいんだよ、鈴理ちゃん。親を唸らせたらこっちの勝ちなんだから。重要なところは大雅と君に任せるし。
分からない時はお姉さん達にも聞いてみてごらん。きっと良い知恵を貸してくれるだろうから」
あまり乗れる助言ではなかったが、楓の言うとおり、自分と大雅だけでは到底できそうにない大仕事だった。
毎晩のように財務諸表と呼ばれる企業の成績表を眺めたり、専門用語を調べたり、経済の本を読んで勉強をしてみるものの分からないことばかりで白旗を挙げそうになった。
学校の勉強ができても、社会に通用するような勉強は未熟だと痛感した鈴理はついに意を決して姉二人に歩んだ。
自分達に協力してくれると楓伝いに聞いてはいたが、本当に協力してくれるのか半信半疑。
不安を抱えながら長女咲子と次女真衣に声を掛けた。
すると二人は笑顔で自分を迎え入れると快く願いを聞き、手を貸してくれた。
夜通し咲子の部屋でやり方や見方、どうすれば親を説得するだけのデータ表が作れるか。
助言を求めては、自分の力でそれを完成させていく。
婚約者達と共同作業とはいえ、楓の言うとおり量は膨大で気が滅入りそうだった。
それでも死ぬ気でやればどうにかなるに違いない。
そう信じて鈴理はデータと向かい続けた。
必死に分析している自分が微笑ましかったのか、ある日、咲子に聞かれてしまう。
「本当に彼のこと。好きなのね」と。
「彼と一緒にいたいから、頑張ってるんでしょう?」
咲子の問い掛けに照れながらも鈴理は頷いた。
「元カレはいつも環境を自力で変えようとしました」
彼の背中を見てきたこそ、今度は自分がやらねばならないと衝動に駆られている。
本当に好きなのだと姉達に気持ちを伝えれば、「知っていますよ」だから私達は貴方に手を貸しているのだと真衣が綻んだ。



